この記事の連載

 「食べるのが大好き」と屈託なくほほ笑む料理研究家の枝元なほみさん。おっとりとした話し方と温かな人柄。そして、食材を余すことなく使い切るレシピが人気です。

 2022年10月には、『捨てない未来 キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す』(朝日新聞出版)を上梓しました。フードロス×飢餓ゼロをめざす枝元さんに、これまで考案してきたレシピに込めた思い、そして資本主義社会と食べ物の関わりについてお話を伺いました。(インタビュー【後篇】を読む)


日常の「料理」を想像したレシピ作り

――枝元さんはこれまで西原理恵子さんとの「おかん飯」や「朝ごはん」、「おでん」など様々なレシピを考案されています。レシピを作る時には、どんなことを大切にされていますか?

枝元 読者や視聴者の台所を想像するようにしています。料理を作る人はどんな人かな。冷蔵庫の中には何が入っているのかな。SNSで皆さんとやりとりした経験から、キッチンに立つのって75%くらいが女性のイメージです。

 とりわけ、働いている人たちが暮らしの中で料理している様子を想像して、そこから離れないように気を付けていますね。というのも、私の父は会社員、母は小学校の先生をしていて、いつも忙しそうにしていたから。「腹が減った」とピーピーわめく子どもの声をそのままに、仕事から帰った両親が急いでご飯を作る様子を想像しています。

――共働き世帯が増えているので、そういう場面は多いでしょうね。

枝元 料理研究家というと、料理だけを突出して考えていそうですけど、料理って本当は日常の中にあるものなのよね。それを意識していたいんです。

 誰かをおもてなしする時も、料理じゃなくて掃除から考え始めるでしょ。「リビングはどの程度まで片づけておけばいいかしら」なんて。そういう日常の中に、料理という項目があるんですよね。

2022.12.28(水)
文=ゆきどっぐ
撮影=平松市聖