キッチンの窓から社会とつながって
――ロスについて考えるうえで、読者ができることってどんなことでしょうか。
枝元 大事なのは「自分がやっていけるか」ってことよりも、「どういう視点を持って次に進もうか」と考えることだと思うんです。
手元ばかりを見るんじゃなくて、視野を広くして、「現代の価値観を変えて、そうじゃない未来へ舵を切りたいよね」って会話できるようになる。昔の価値観で話している人たちと会ったら、「まだそんなレベル?」と横目で見ながら前に進んでいけるような。
――行動ではなく、考え方からまずは身につけていく、ということでしょうか。
枝元 そうですね。「キッチンの窓を開けて社会とつながる」って、私はよく表現しているんだけど。食べ物がどうなっていくのか。現代社会の状況を誰が作っているのか。食べ物を作る人たちが「永遠に作ってもいい」と思うためにはどうしたらいいのか。もし政治に疑問を抱いたら、「しょうがない」って飲み込むんじゃなくて、「ばかいってんじゃないわよ」って言える考え方を身につけてほしいです。
料理は愛情とは言いたくないけど、作る人たちが本当に悲しんだり怒っていたりしたら、きっとおいしくなくなるよね。そう思ったら、台所の中だけが幸せで、お金があって、いい食材が揃っていても仕方がない。食べ物を作ってくれる人たちがいなくなったら終わりなんだから。料理はすべてのこととつながっているんだということを忘れないでほしいな。
枝元なほみ(えだもと・なほみ)
1955年3月22日生まれ。太田省吾を中心とした劇団「転形劇場」で劇団員をしながら、東京都中野区にある無国籍レストラン「カルマ」(現在は閉店)に勤務。劇団解散後、料理研究家として仕事を開始。その後、料理研究家の阿部なをに師事する。農業支援を行う「チームむかご」、ホームレスの人たちがパン屋で余ったパンを販売する「夜のパン屋さん」の活動なども行う。2019年には、ビッグイシュー基金の共同代表に就任。「エダモン」の愛称で親しまれる。
捨てない未来 キッチンから、ゆるく、おいしく、フードロスを打ち返す
定価 1980円(税込)
朝日新聞出版
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2022.12.28(水)
文=ゆきどっぐ
撮影=平松市聖