恋愛の神様といわれる柴門ふみが東京に生きる若者達を描いた漫画『東京ラブストーリー』は、テレビドラマ化もされたヒット作。この漫画を原作とし、時代を2018年へと移した設定でミュージカル化される。
音楽は2022年度のトニー賞にノミネートされたジェイソン・ハラウンドが手がけ、主人公の永尾完治と赤名リカを、「空」チームは柿澤勇人、笹本玲奈、「海」チームは濱田龍臣、唯月ふうかが演じるという2チーム制で初演される話題作だ。
今回、ミュージカル『東京ラブストーリー』の振付を担当し、モンテカルロ・バレエ団のプリンシパルとして活躍している小池ミモザさんにお話を伺った。
ミュージカル作品の振付に初挑戦
――ミュージカルの振付を依頼されたときの、お気持ちをお聞かせください。
確かに最初は、“私がミュージカルの振付をする?”と思ったのですが、よく考えてみると、ミュージカルには音楽、歌、ダンスという私が好きなものが要素として全部入っている! ということに気づきました。
私が2021年にモナコで創った『つなぐ』という作品があるのですが、それを観た友人から「ミュージカルみたいで面白い」といわれたことを思い出しました。自分が振付をする作品でも言葉を発することはよくあります。だから普段自分がやっていることと、そんなに遠いことではないんじゃないかなと感じました。
自由で子供のような好奇心を持ち興味あることを追求し続けるのがアーティストだと私は思います。だから「東京ラブストーリー」のミュージカルのお話をいただいたとき、初めてのミュージカルの振付に不安な気持ちもあったけれどやってみよう、やってみないとわからないと思い、とても楽しみになりました。
――『東京ラブストーリー』にはどんな印象をお持ちですか?
私は建築家の父と画家の母の元に生まれ、15歳の時に日本を離れたのでヨーロッパでの生活のほうが長いのですが、ちょうど10代になったばかりの頃にドラマで見て、ものすごく有名な作品だったと記憶しています。
細かいストーリーまでは覚えていませんが、自分の意志で生きていくリカと、彼女に振り回されながらも、その刺激がカンチの人生の中ですごく大事なものになっていくということを観ていて感じ取りました。
1930年から50年代にあったミュージカルの原点を探る
――本作の振付をするために、どんな準備をされましたか?
ミュージカルのお仕事のために、まず勉強したのは1930年代から50年代ぐらいのミュージカル作品をたくさん観ることでした。
バレエダンサーである私に振付を依頼されたということは、皆さんがご存じのミュージカルの振付ではないものを求められていると思って、ミュージカルがこういうところから生まれたという源流を勉強しておいたほうがいいと思ったんです。
例えば有名な『AN AMERICAN IN PARIS』とか、1939年にブロードウェイで上演されて映画化された『Hellzapoppin』とか。その影響なのか、私の振付はアンサンブルの方たちからもよく言われるのですが、“普通のミュージカルっぽくない踊り”らしいです(笑)。
――今回のダンスの場面は、バレエのメソッドを生かした振りなのでしょうか?
私の振付は「コンテンポラリー・ネオクラシック1)」の現代的な動きになっていると思います。
また、以前から取り入れてはいるんですが、意外と日常生活にも見られるようなジェスチャーも使っていて、振り返るという動作をオーバーにしてダンスにするといったダンサーたちがイメージしやすい動きにしています。
ダンスの振付だけが見えるのではなくて、ストーリーが見えてほしいです。“こういう気持ちだから手が動いている”ということが、伝わるほうがいいと思うので、それを意識してほしいと演者の皆さんに話しています。
これは余談ですが、お稽古が始まる前、振付をするのに私自身も身体を整えようと思ってバレエダンサーの基礎練習である“クラス”を私とアシスタントの2人でやっていたら、徐々に参加する人が増えてきました。1時間くらいにぎゅっと縮めて、皆さんと一緒に一通り最後までしますが、これが結構きついんですよ(笑)。
1)バレエのテクニックを基にコンテンポラリーの振りを入れたもの
2022.11.26(土)
文=山下シオン
撮影=三宅史郎