大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で100歳くらいのおばばを…
——子供のころから物おじしない子だったのですか?
最近、思い出したんですが、中学のときの弁論大会で「大人はずるい」というテーマで話しました。区大会、都大会に出れば、世界を変えられるぐらいに思っていた(笑)。でも、優勝はできなくて、「時間は守ろう」が1位になったんです。
納得がいかなくて、先生に抗議しました。「私のほうが絶対よかったと思います」と言ったら、「大人はずるい」というテーマは学校としても困るのだと言われました。そんな子供でした(笑)。
——大竹さんは、演じることが大好きというのが全身から滲み出ていますが、他人になること、戯曲を読み深めること、相手役とのキャッチボール、演じる上で何が喜びですか?
その全部が楽しいです。この間、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で100歳くらいのおばば(歩き巫女役)を演じたのですが、100歳まで生きた人の心情を想像するのも楽しかった。
10代のけいちゃん役で、少女の心情に戻れるのも楽しい。人の人生を演じることは楽しいです。5年前のミュージカル『にんじん』では、22歳のときにやった14歳の少年の役を60歳でもやりましたけど、20代より60代のときのほうがお芝居しないですみました。開き直りもあって(笑)。
——役によってはハードな精神状態に陥ることもあると思いますが、苦しくなりませんか?
苦しさを演じる喜びもあるんです。ギリシャ悲劇やシェイクスピアなど、壮絶な悲しみや憎しみを体験しますけど、セリフを言いながら発散するのでそれもものすごく楽しいです。
——大竹さんくらいボーダレスに活躍される俳優さんも少ないと思います。『女の一生』のような新劇も翻訳劇も、ミュージカルや松尾スズキさんのお芝居にも出られています。
面白いと思うものをやっています。巡り合わせもありますね。新橋演舞場には2016年の『三婆』で1988年の『ガラスの仮面』から28年ぶりに帰ってきました。そのときに、お芝居もお弁当も楽しみに地方からいらして、幸せそうに客席にいらっしゃるご夫婦を見て、「私はなんて幸せな仕事をしているんだろう」と思いました。
蜷川幸雄さんの演出の舞台とは全く違う空気感ですが、こういうエンターテインメントもある。『三婆』も『女の一生』もシェイクスピアもチェーホフも松尾さんもすばらしいお芝居だと思うから、どちらもいったりきたりしたいです。
楽しいお芝居はいろいろあるし、楽しみ方もたくさんありますから、それを伝えていけたらと思います。
2022.10.18(火)
文=黒瀬朋子
ヘアメイク=新井克英
撮影=佐藤 亘