朝ドラのヒロインは近年、マイナーチェンジしているとはいえ、基本は明るく元気でさわやかが3大要素。故郷沖縄に錦を飾るような作品で、賛否あるクセの強いヒロインで良かったのだろうかと、余計なお世話だが心配しながらこの半年間、見続けた。
「明るく元気でさわやか」なヒロインの時代は終わった?
念のため、ここでなぜ、朝ドラヒロインに、明るさ、元気さ、さわやかさが期待されるのかおさらいしておこう。00年代のはじめまで確かに朝ドラ3原則は「明るく・元気に・さわやかに」とされていた(NHKドラマ・ガイド 『私の青空』〈NHK出版〉より)。そもそもの発端が「私たちももっとのびやかに、さわやかに生きたい」(『朝ドラの55年』〈NHK 出版〉より)という願いに応えたドラマシリーズであったこともあって、それが綿々と続いてきたのだ。
筆者は『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書、2017年)で2010年~17年の朝ドラ、『ネットと朝ドラ』(株式会社blueprint、2022年)で17年~22年の朝ドラを一作一作分析しているが、ヒロイン像が「明るく・元気に・さわやかに」からじょじょに変わってきて、『べっぴんさん』(16年)のヒロインは思ったことを口にできない内気な人物で、『ひよっこ』(17年)のヒロインはこころのなかでちょっぴり毒を吐いていて、『おかえりモネ』(21年)のヒロインは「わたし何もできなかった」と人に言えない悩みを抱えている。
曇りない明るさでいつも笑っているようなヒロインは少なくなってきた。『なつぞら』(19年)のヒロインは「無理に笑うことはない。謝ることもない。お前は堂
々としてろ」と北海道の育ての祖父・泰樹(草刈正雄)にそう言われている。ちなみに草刈正雄は「ちむどんどん」の最終週第122回に登場すると話題になっている。
健気さを売りにしないヒロインはかつてのようにたくさんの人に支持されにくい。影があったり我が強すぎたりするヒロインを敬遠してしまうからだ。逆に、常にとびきり明るいヒロインが苦手という人には支持される。
2022.10.06(木)
文=木俣 冬