そして、黒島結菜が長年、育ててきた割り切れない感じは、沖縄を舞台にした『ちむどんどん』にふさわしかったのではないだろうか。沖縄はきれいな海があって明るく元気でさわやかなだけの観光地ではなく、その成り立ちは極めて複雑だ。
いまは同じ日本でも、同じでは決してない歴史や文化やものの考え方があり、暢子とは、簡単に縮めることのできない距離感を表すかにも見える。南の島のヒロインを黒島結菜はその割り切れない魅力で懸命(賢明)に演じきったのだ。
最後にひとつだけ。かつて『カーネーション』(11年)のヒロインが勇まし過ぎるという指摘が多くあったようだが、その後、尾野真千子は名優として活躍している。
2022.10.06(木)
文=木俣 冬