僕が園子温に共鳴し、カラオケを歌うようになったワケ

遠山:博士は映画監督の園子温さんの『非道に生きる』という本を読んで、人生が変わったそうですね。私も監督の映画が好きで、この本を読んだんですが、「何度も骨をボキッとへし折られるような痛みを世間が僕に与えてきてくれたことには、いつも感謝している。そして最大の悪意をもって奴らに恩返ししようと、いつだって思っている。」と書かれていて、そこは博士はどう思っているのか伺いたいと思っていました。

水道橋博士:僕は嫉妬やルサンチマン、復讐なんかを表現のなかで噴射していくというのを、もう40歳くらいからやってないです。とくに子どもが生まれてからなくなりましたね。

遠山:では園監督のそういうところに共感したわけではないんですね。

水道橋博士:僕は公開中の園子温監督の『地獄でなぜ悪い』という映画に警察官の役で出てますが、クランクアップ2日前に現場に入ったら、監督が僕の顔を見た瞬間、「なんで博士がここにいるの?」って言ったんです(笑)。

遠山:あはは。

水道橋博士:「あ、俺、博士キャスティングしたの忘れてた」って。それが園子温監督との初対面でした。

遠山:そうだったんですね。

水道橋博士:そのとき園子温監督の映画のすさまじい撮影現場の様子を見て、監督は僕より1歳年上ですけど、「ああ、51歳でも、こんなにまったく寝ないで集中できるんだ」と思ったんです。そして『非道に生きる』を読んで、園子温の姿勢を知って、ああそうか、と。僕が園子温に共鳴するのは、その姿勢なんですよ。

遠山:それで博士もその姿勢をコピーして。

水道橋博士:だから寝てられない。園子温へのライバル心ではなくて、51歳の人がこれだけできて、50歳の俺ができないわけがないと思ったんです。

遠山:博士はミュージシャンの岡村靖幸さんとも親交がありますよね。私も岡村さんの曲が好きで、結婚式の二次会の手品のBGMに岡村さんの曲を使ったりしていたんです。このあいだお会いして、生で歌っているのを聴いて感動しました。

水道橋博士:僕はこれまで人前でカラオケをすることはなかったんです。漫才は芸人で修業したからできるんですが、歌を歌うプロではないし、芸人なのにうまくないので恥ずかしかった。それが50歳のときに岡村さんに「真夏のセレナーデ」を一緒に歌おうと言われて、無理やり歌わされたことで、「俺、歌えるじゃん」と気付いたんです。そして、その3日後くらいにまた岡村さんに偶然、浅草で会って、僕が人前で歌うのがいちばん恥ずかしい曲「浅草キッド」を歌ったんです。

遠山:北野武さんが作詞・作曲をされた曲ですね。

水道橋博士:そうです。殿の修業時代のことを歌っています。僕は「浅草キッド」だし、この曲は売れないころを描いた曲で、めっちゃ恥ずかしいから絶対歌わないと決めてたのに、岡村さんの前で歌ったら、歌えたんですよ! その後、8月17日に事務所の無料イベントがあって、そこで300人のお客さんの前で「浅草キッド」を歌いました。客前で歌うのを克服したんです。51歳になる前日のことでした。

遠山:殿の曲で解脱したなら言うことないですね。

水道橋博士:そうです。僕はもうすぐ僕が主催の歌謡ショーをすると思います(笑)。やらなきゃいけないんです。そういう強迫観念で生きてます。だからお弁当もつくるんです!

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2013.10.18(金)