先ほどお伝えしたような仕事の悩みも抱えている状況での選択だったので、「思い切って仕事を辞めて、結婚して静岡に行こう」と決断しました。

――アナウンサーという仕事に、心残りはなかったですか。

 

竹内 東京オリンピックに関わりたい気持ちはありましたね。オリンピックは自分にとって憧れの場所でしたし、アナウンサーを続けていれば担当できる可能性もあったので。それでも「夫と結婚して静岡で家庭を築きたい」という思いのほうが強かったんです。

静岡移住はチャンスだと思っていたが……

――地方移住に対する抵抗感はなかったのでしょうか。

竹内 なかったです。むしろワクワクしていました。アナウンサー時代は会社のすぐ近くに住んでいて、常に周りの目を気にしながら下を向いて歩いてましたけど、静岡なら一旦その状況をリセットできる。

 だから、知らない土地に住めるのはチャンスだと思いました。静岡に着いてからは「前を向いて歩ける!」という清々しい気持ちでいっぱいでしたね。

――しかし、新しい土地で知り合いもいない状況だと、寂しさを感じるのでは?

竹内 引っ越した直後は夫以外と喋る機会がなくて、寂しかったです。それに夫の帰りが夜遅いから、日中は本当にやることがなくて。夫が帰ってくるまでカフェで時間を潰していたこともありました。LINEやZoomを使えば友人と話せますけど、やっぱり直接話さないと寂しさが紛れなかったんです。

 最初はその状況にも耐えていたんですけど、それがずっと続くと「このままではダメだ」と思い始めてしまい……。夜中に帰ってきた夫に、泣きながら寂しさを訴えたこともありました。

 自分がした決断だから後悔はなかったし、新しい土地での生活にも前向きな気持ちしかなかった。でも実際に始めてみると、思っていた以上に孤独でした。引っ越す前は「専業主婦になるのもいいかな」と思っていたんですけど、次第に「やっぱり仕事がしたい」と思うようになって。

2022.10.03(月)
文=桃沢もちこ