よくあるトラブルその2 危険な生き物を知ろう
自然豊かなキャンプ場にはさまざまな動物や虫がいて、中には犬や人間にとって危険な生き物も少なくありません。ここでは、特に死に至る危険のある3 つの生き物を中心に、生き物に関するトラブルの予防法と、トラブルに遭ったときの対処法を解説します。
危険な生き物ワースト3
◆ワースト1「マムシ」
初夏から秋にかけて、日本全土の山や川など自然豊かな場所に出没する、体長50~60センチの小型のヘビ。背中の斑紋と、三角形に近い頭が特徴。
【予防】30センチ以内に近づかない
攻撃範囲(約30センチ)に入らなければ噛んでくることはありません。ただ、草むらや落ち葉などに隠れてとぐろを巻いてじっとしていることが多く、見つけにくいです。マムシがいそうなところを歩くときは、人間は長靴や長ズボンなどを履き、足を露出しないようにしましょう。また、夜の暗い時間は歩き回らないほうが無難です。
【対応】できるだけ動かさず病院へ
牙が細くて短いため、噛まれてもチクッと感じるだけでマムシとは気づかないこともありますが、何かに噛まれて腫れてきたらマムシの疑いが強いです。人間はポイズンリムーバーで毒を吸い出しますが、犬は毛があって使えません。体内に毒が回らないよう、できるだけ動かさないようにして、早急に病院で処置を受けさせましょう。
ノミ・ダニは感染症にも注意
自然の中で楽しむキャンプで避けられないのが、動物や虫との遭遇。ノミやダニはどこにでもいて、ついてしまってから対処するのは大変なので、キャンプに行くならノミ・ダニ予防薬の服用は必須です。さらに、ノミ・ダニは感染症を引き起こす可能性もあります。特にマダニは、人間にも感染し死亡することもある重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の危険があり、西日本で多く報告されているので、しっかり予防しておきましょう。
また、遭う確率はノミやダニより低いものの、死に至る危険があるのがマムシ、ハチ、ヒキガエル。万が一遭ってしまったときのために、適切な対処法を頭に入れておきましょう。
◆ワースト2「ハチ」
日本には4,000 種類以上のハチがいるが、被害に遭いやすいのはミツバチ、アシナガバチ、スズメバチの3種類で、特にスズメバチがもっとも危険。
【予防】近づかず、静かに去ること
凶暴で毒も強いスズメバチは、集団で襲ってきて何度も刺すだけでなく、毒をまき散らす攻撃をしてくることも。繁殖期の8~10月には特に攻撃的になります。
ハチがいる場所や巣には近づかず、見つけたら静かに去りましょう。黒や赤、青などは標的にされやすいので、白系の服を着せて。また、食材や飲み物のにおいに寄ってくるので、必ず蓋をしましょう。
【対応】軽傷に見えても病院へ
針を見つけたら、可能であれば毛抜きやピンセットなどで抜き、刺された箇所をきれいな水で洗って、冷水や保冷剤で冷やします。毒針についた袋をつかまないよう注意。応急処置ができてもできなくても、急いで病院を受診しましょう。
2度目に刺されたときに起こることが多い、強いアレルギー反応であるアナフィラキシーショックが起こると、死に至ることもあります。
◆ワースト3「ヒキガエル」
俗称ガマカエル。体長7~18センチほどの大きなカエル。森林や草原、農耕地、公園、民家の庭など、水が近くにない街中でも見かける。夜行性。
【予防】触れたりくわえたりさせない
犬がカエルをくわえたり噛んだり食べたりすると、耳下腺や皮膚から猛毒が分泌されて、ヒキガエル中毒により嘔吐や不整脈、けいれん発作を起こし、死に至ることも。
触れただけで皮膚炎を起こすことがあり、死んだカエルでも触れさせないようにしましょう。主な食料はミミズや昆虫なので、ミミズや昆虫がいそうな場所では特に気をつけて。
【対応】口を横から水で洗って病院へ
犬がカエルをなめたりくわえたり食べたりしたら、すぐに大量の水で口を横から洗った後、動物病院に電話をして駆け込みましょう。
正面から水をかけると気管に入る危険があるので、絶対NG。散歩中に口から大量の唾液を出したり、頭を振ったり、顔を気にして前足で引っかいたりし始めた場合も、ヒキガエル中毒の可能性があります。
◆その他、気をつけたい生き物
ノミ
ノミは藪や草むらに生息し、予防薬を接種しておくことでほとんどの場合は防げます。ついてしまったときは薬で駆除し、家や車の中をよく掃除しましょう。
ダニ
予防薬を接種しておけば、ついても寄生したり増殖したりはしません。取り除くときは専用ピンセットを用い、軍手などをしてつぶさないように取りましょう。
ヤマビル
鹿の多い山域に、気温20 度以上になると現れ、湿気が多いと活発になります。肉球の間についたら、塩水などで撃退し、血を絞るか傷口を水で洗い流します。
蚊
犬も蚊に刺されるとかゆがるので、蚊取り線香や犬用虫除けスプレーで対策をしましょう。蚊が媒介する犬フィラリア症の予防薬も忘れず飲ませておいて。
イモリ
アカハライモリには、フグと同じテトロドトキシンという毒があります。くわえたり食べたりしても死ぬほどの量ではありませんが、食べてしまったら病院へ。
監修 松崎暢之
アメリカン・コッカー・スパニエルの愛犬ジョナが3歳で若年性白内障を患ったことをきっかけに、目が見えているうちにたくさんの景色を見せたいと、キャンプを始める。2018年に東京都目黒区にて犬連れ専門アウトドアショップを、2020年に千葉県館山市に全サイトがドッグフリーサイトの犬連れ専門キャンプ場をオープン。本書発行時は店舗移転準備中で、2022年3月に千葉県木更津市にて営業再開予定。
https:// dogcamp.jp/
監修協力 中村篤史
TRVA 夜間救急動物医療センター 院長。獣医師。北里大学獣医学部獣医学科卒業後、東京大学附属動物医療センターや酪農学園大学での研修医を経て、埼玉県内の病院に勤務する中で、獣医界の救急医療の必要性を実感。2011年より現職。2018年には日本獣医救急集中治療学会の立ち上げに携わり、理事長に就任。日本に動物の救命救急分野を根付かせようと尽力している。プライベートではトレーニングやサーフィンを楽しむスポーツマンでもある。
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文=井上綾乃・山賀沙耶
イラスト=岡本倫幸
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