なぜTwitter小説を次から次へと量産できるのだろうか
「それは自分の属性にもすごく近いから書きやすかったし、これまで見てきた人たちからサンプリングしたデータがいっぱいあったから、機械的にバーっと構成して。それで書いていったら、案の定いい意味でも悪い意味でもインターネットのおもちゃになって、流山おおたかの森をイジった『30まで独身だったら結婚しよ』が一番最初にバズりました」
アザケイは作中で「お前を見る。お前の暮らしを見る。お前の人生を見る。見えないはずのそれらを想像する。それはつまり決めつけで、決めつけとはつまり暴力だ」と書く。
「わからない他者を想像して理解しようとする試みでもあるんですよ。自分にとっては誰かの人生を書いてるから。ほら、『あなたの気持ちわかるよ』とかって僕、理解できなくて。そんなの、わかった気になってるだけじゃねえのって。色んな人の、僕が知ってる人生の断片をつなぎ合わせて、3、4000字で完結する人生を作ってる。ネットで、僕の小説は麻布競馬場本人のセラピーだって言われることがあるんですけど、そのとおりなんですよね」
執筆する時に意識するのは、あの手法だった
みんながあれこれSNSで感想を言い合うアザケイのTwitter小説は、実は非常に技巧的だ。「書くのはパソコンではなく、スマホのみ。ライブ感を大事にしています。下書きもしないようにして、結末もわからずに書き始めて、バーって駆け抜けた方が面白いものが書ける。着想は、歩いてる時や家でのんびりしてる時に、最初の140字をパッと思い付くんですね。それでとりあえず1回飛び降る気持ちで、書き始めてみるんです。
変な完璧主義みたいなところがあるから、ちゃんと考え始めると一生書き終わらない。なのでTwitterみたいに、書いたら消すしかないみたいな、もうやり続けるしかないというフォーマットはすごく向いている。強制的に頭から絞り出せる。ほんとは恥ずかしいからやりたくないなとか、これ書いたら誰か嫌な気持ちになるかなとか思うようなことも、良くも悪くもパッと出せちゃう」
2022.09.12(月)
文=河崎 環