“座右の書”はそのときどきで変わる

「書く」とともに「読む」も続けてきた高瀬さんにとって、座右の書と呼ぶべき1冊はあるだろうか。

「それはそのときどきで変わっていきますけどね。いま頭に浮かぶものとしては……。金原ひとみさんの作品は全部好きで、『マザーズ』や『アンソーシャル ディスタンス』を読んだときには頭を思い切りぶん殴られたような衝撃を感じました。本谷有希子さんの『静かに、ねぇ、静かに』や『ぬるい毒』も、読むたび思わず声を上げそうになってしまう。島本理生さんの『ナラタージュ』は、これまでに何度読んだか知れませんね」

 どれも読む側に大きなインパクトを残す作品ばかり。思えば今作『おいしいごはんが食べられますように』も、読み味からしてこれら先行作の系譜に連なる小説ではないか。

「もしそう読んでくださる方がいるのだとしたら、そんなにうれしいことはないです。生まれてきてよかったなと、ただただ思います」

メイク TOMOMI・小池康友(K.e.y.)

2022.08.06(土)
文=山内宏泰