1月20日に「推し、燃ゆ」で第164回芥川賞を受賞したのは、21歳の宇佐見りんさんだった。デビュー2作目での受賞、現役の大学生であることも大きな話題となっている。
昨年7月には、遠野遥さんが28歳で同賞を受賞。朝井リョウさんが直木賞を受賞したのは2013年、23歳のときのことだった。いずれも“平成生まれ初”の受賞となる。
若手作家にますます注目が集まるなか、“平成生まれ初”直木賞、芥川賞受賞者による初めての対談が実現した。
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遠野 宇佐見さんは新人賞を同時受賞してデビューした、いわば同期作家なので、芥川賞の受賞はとても嬉しいです。宇佐見さんの第一作『かか』、芥川賞を受賞した第二作『推し、燃ゆ』ともに何歳で書いたとしてもすごい作品であることには変わりないんですが、年齢に注目して騒ぐ人も一定数いますよね。
朝井さんが直木賞を受賞されたとき「平成生まれ初」や「戦後最年少」などと騒がれましたが、周りの反応はどうでしたか。
朝井 当時、私は会社員1年目でしたが、受賞翌日、ある同期から初めてランチに誘われたんです。祝ってくれるなんて嬉しいなと思っていたのですが、食事中、なかなか直木賞の話題にならない。照れているのかと思っていたら、食後、「今日は、朝どうやって起きてるのか教えてほしくて誘ったんだよね」と言われたんです。
遠野 どういうことですか?
朝井 彼は直木賞のことなど知らず、苦手な早起きについて相談したかっただけだったんです。受賞会見で大量のカメラに囲まれた翌日のことだったので、私はまだフワフワしていたのですが、彼のおかげで現実に戻れました。外の世界は何も変わっていない。あの会見や一連のセレモニーは、ものすごく閉じられた世界の出来事なのだと気付けました。
遠野 受賞翌日、そんなことがあったんですか。出版界にとっては大きなイベントですが、世の中には文学の賞自体に全く関心がない人も結構いますよね。
2021.03.01(月)
文=「文藝春秋」編集部