寝苦しい熱帯夜や、コロナ禍で運動不足がたたりつい夜更かし…、と質の高い睡眠をとることは難しいもの。しかし、快適な睡眠はダイエットにもつながります。医師らが語る「やせる睡眠」(「週刊文春WOMAN」2021年夏号)を全文転載します。(全2回の1回目/後編に続く)

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睡眠と肥満の関係とは

 コロナ禍で外出自粛が続くいま、家にいる時間が増え、ダラダラとお菓子を食べ続けたり、つい夜更かしをしてしまうという人も多いのではないだろうか。気がつけば体重は増える一方……。とくに代謝が落ちる40代以降の女性からは「食事を減らすくらいじゃ、体重が減らなくなった!」という悲鳴も聞く。

 近年、「睡眠時間が短いと太りやすい」など、睡眠と肥満の関係を耳にするようになったが、これは一体どういうことなのだろうか。30年間で3万人の肥満治療を行った内科医の左藤桂子氏が解説する。

「睡眠中に分泌される成長ホルモンは、成長期の子どもに必要なものとして知られますが、大人にも必要です。疲れた体を修復するアンチエイジングの役割を果たしますし、ダイエットという面では、体内に蓄積された脂肪を分解し、エネルギーに変えてくれるのです。

睡眠不足は味覚にも影響する

 成長ホルモンが充分に分泌されると、ひと晩で300キロカロリー(お茶碗1・5杯分のご飯相当)を消費できます。体重に換算すれば、1ヶ月強でマイナス1キログラムという計算。つまり、正しく眠っているだけで、半年間で6キログラム以上も体重を落とすことが可能なのです。逆にいえば、正しく眠らないと月1キロずつ太っていくということです」

 さらに、睡眠不足は味覚にも影響するという。

「米シカゴ大学の実験で、一方のグループには10時間睡眠を、もう一方のグループには4時間の短時間睡眠を2晩試みてもらったところ、後者の短時間睡眠グループでは食欲を増進させる体内物質が増え、食欲を減退させる体内物質が減少。さらに、味の濃い炭水化物を好むようになったというデータが発表されています」(左藤氏)

2022.08.03(水)
文=梅津有希子