でも僕は昔から、それこそボーイズラブという言葉が生まれる前に「やおい」と言われていた時代から、積極的に出演してきました。その頃は、CDではなくカセットテープでしたね。今はもうなくなってしまいましたが、ダイヤルQ2(NTTが提供していた有料音声サービス)もやっていました。

 なんといっても当時は、プロの声優が演じる場そのものが少なかったんです。だから、声優が活躍できる場が増えるのはいいことだと考えていましたから。数えたことはないですが、おそらく出演数は日本で一番多いのではないかと思います。また、インターネットのまとめサイトによると、僕がもっとも多くの男性声優の「初めて」を奪った声優になるそうです(笑)。

 

セクシャルな演技は感情を開放できるかが勝負

 いまやBLCDは、これからという期待の新人声優にとって、ブレイクのチャンスをつかむための登竜門的な位置づけにまでなっています。アニメだと新人は一言、二言しかセリフがないという場合がほとんどですが、BLCDだと何ページにもわたって先輩と渡り合えますから。そこでファンに気に入られて仕事が増えていき、スターダムをのし上がっていくこともできます。

 同時に、先輩とがっつり演技で絡むことで、いろいろと学ぶこともあるだろうと思います。僕自身、先ほどオーディオドラマでは共演者を1ミリ、2ミリ突っつくという話をしましたが、これは教育的な意味もあるんです。そこで良い反応を示した若手には「こいつは売れるだろうな」と感心することもありますし、実際に売れっ子になった人もたくさんいます。

 男性同士でのセクシャルな演技を難易度が高そうと思う人もいるようですが、僕は難易度というより、役者としての感情の開放論の問題だなと思います。役者は自分の感情を開放できないと土俵にも上がれません。しどろもどろでかしこまってしまえば、ただセリフを音声化しただけでつまらないものになってしまいます。

2022.07.30(土)
文=森川智之