山形テロワールの豊かさを旅で訪れて感じてほしい

――今回の座談会は「山形座 瀧波」のチーフシェフを務める原田誠さんの料理と共に、ワインについて語り合う贅沢な集いとなりました。

岩谷 いやほんとに、原田さんの料理は塩加減や味の塩梅が絶妙ですよ。

原田 ありがとうございます。もともと新潟でレストランをやっていて、昨年山形に来たんですが、食材の豊かさに驚かされています。山菜や川魚など、様々な食材に出合えるのが楽しいですね。

岩谷 山菜の苦みが美味しいとか、日本人のDNAに刻まれている味覚に合ったワインを造っていきたいと僕は常々思っているんです。

矢野 岩谷さんのワインは出汁とよく合いますよね。

岩谷 クールジャパンを表現したイエローマジックですから(笑)。

恵美 いわゆる家庭料理に合うワインを造っていきたいんです。

岩谷 日本人の舌は世界に誇るDNAを持ってる。今日はカレーで明日は煮物とか、とにかくいろんな食べ物が食卓に出るわけで、それらを受け止めるワインを造りたいというか。日本に生まれてよかったなと思えるヒントを、次の世代が感じ取ってくれればいいなと思ってる。だからこの年になっても前線でやっているわけ。

矢野 僕も岩谷さんのようにありたいです。

岩谷 はるくんのワインは僕のとは攻め方が違って、外に広がっていくような味。ヨーロッパ型に近い味かな。

矢野 確かにそうですね。まるい感じの味を目指しています。

岩谷 僕のワインは底辺にぐーっと行く感じの重心低めの味だけど、はるくんのは高めの印象がする。こうやって、南陽の二つのワイナリーの棲み分けができていているのが面白いよね。瀧波さんでひとつの料理をベースに二つのワイナリーの世界観に触れる。それは東京ではできないこと。山形に来て、その空気感を楽しんでもらうことこそがテロワールなんじゃないかな。

2022.07.30(土)
文=CREA編集部
撮影=長谷川 潤