紅葉を見に、京都へ行こう! 京都在住の写真家・小林禎弘さんが、長年の撮影の経験を踏まえて紅葉の名所を紹介します。京都の人ならではの行き届いた観光案内、撮影指南としてもお楽しみいただけます。
【第6位】嵯峨鳥居本
鳥居本は、嵯峨野の一番奥というよりも愛宕山の麓です。一帯は嵯峨鳥居本伝統的建造物群保存地区に指定されています。歴史は古く、愛宕街道を中心に平安京ができる前から開けており、江戸中期からは愛宕神社詣の門前町として栄えました。現在の静けさからは想像がつきません。
街道沿いには、往時を偲ばせる藁葺きの木造建築。敷地内に一の鳥居が立つのが茶店の「平野屋」。もう1軒が「鮎の宿 つたや」です。どちらも400年の歴史をもち、鮎料理が名物です。今でも上桂川で捕れた鮎を炭火で焼いています。お米も炊飯器ではなく、おくどさん(かまど)で炊いたものが出されます。
「平野屋」は様々なCMやテレビ番組に登場していますから、実際に足を運ぶと、「ああ、ここだったのか」と思うかも知れません。愛宕山名物に「志んこ」というだんごがあり、かつては愛宕山の参道のあちこちで売っていたそうです。平野屋でお茶と一緒にいただけるので、ひと休みするのもいいでしょう。
写真は、愛宕街道と交差する嵐山-高雄パークウエイの橋から撮影したものです。そのほかの撮影ポイントとしては、高台を走る道から紅葉越しに平野屋の屋根と玄関を覗く、あるいは愛宕街道からつたやの軒をなめながら鳥居とその後ろの平野屋さらに街道脇から大きくかぶさった紅葉をといったところでしょうか。
道は鳥居の下で二股に分かれ、左に道をたどると柚子の里で有名な水尾に至ります。峠越えをする形になりますが、水尾への途中で保津川沿いに旧山陰線保津峡駅(現トロッコ保津峡駅)の吊り橋を見ることが出来ます。この駅は「蒲田行進曲」のロケにも使われました。主人公のヤスが小夏(松坂慶子)を連れて里帰りするシーンです。
右へ行くと清滝、そして愛宕神社への登り口へ至ります。トンネルを抜けたところが清滝です。清滝のシンボル・赤い欄干の渡猿橋があります。紅葉は橋、集落と川辺を囲んで真っ赤です。郷愁を誘う家並みを抜けると愛宕神社への登り口ですが、夕方からは登らないように。遭難しますので。
嵯峨野鳥居本の紅葉スポット
交通手段 JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅からタクシーで約10分。京都駅より京都バス清滝行き「鳥居本」バス停で下車し、徒歩5分。
小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。
2013.09.25(水)