紅葉を見に、京都へ行こう! 京都在住の写真家・小林禎弘さんが、長年の撮影の経験を踏まえて紅葉の名所を紹介します。京都の人ならではの行き届いた観光案内、撮影指南としてもお楽しみいただけます。

【第10位】鴨川

鴨川の左岸(東側)は、銀杏、楓、染井吉野、山桜が入り交じった並木道があって美しい

 鴨川は京とは切っても切り離せない存在です。往時の都の東を流れる鴨川は、生活用水でもあり、友禅染のような産業にも欠かすことのできない恵みの川でした。100万人都市を流れる川で鮎が釣れるのも、珍しいのではないでしょうか。

 さて鴨川と一口に言っても、河川沿いの遊歩道は北は上賀茂から南は伏見の手前の竹田まで何キロにも及びます。紅葉の見どころとしては、下鴨神社の南、高野川との合流地点の加茂大橋から丸太町橋までがおすすめです。左岸(東側)の遊歩道は川側に楓、染井吉野、山桜が、車道側には銀杏が立ち並び、きっちり並木になっています。

 また右岸(西側)の加茂大橋から荒神橋の間は黄色く染まる広葉樹の大木も多く、素晴らしい散歩道です。ジョギングする人、楽器演奏する人、ランチする人、散歩する人のほか写真撮影している人もよく見ます。映画やテレビドラマのロケ地に使われることもしばしばです。

 丸太町橋の少し北に、「山紫水明処」と呼ばれる儒学者頼山陽の藁屋根の書斎があります。ここから見た風景は、かつて「山は紫にして水明し(あけらかし)」、つまり鴨川と東山の美しさが最も素晴らしいといわれ、そのため京都の一等地と称されたところです。

 時間のある方は、都会の原生林「下鴨神社・糺(ただす)の森」の紅葉を、アニメファンの方は「有頂天家族」に出てくる桝形商店街、河合橋、BONBON CAFéやその周りの賀茂川を巡られてはいかがでしょう。そっくりに描かれていますよ。

 鴨川のせせらぎを聞きながら、万城目学さんの人気小説『鴨川ホルモー』のページをめくるのも楽しいかもしれません。

鴨川の紅葉スポット
交通手段 京阪電車「出町柳」「神宮丸太町」。市バス、河原町今出川~河原町丸太町の停留所が便利です。

小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。

2013.09.21(土)