紅葉を見に、京都へ行こう! 京都在住の写真家・小林禎弘さんが、長年の撮影の経験を踏まえて紅葉の名所を紹介します。京都の人ならではの行き届いた観光案内、撮影指南としてもお楽しみいただけます。

【第8位】圓光寺周辺

美しい紅葉の庭を写真のトリミングのように切り取った圓光寺の十牛の庭

 京都の北東、比叡山のふもとにある修学院から一乗寺のあたりは、小さいながらも個性的で特徴のある社寺が点在しています。北から順に辿ってみましょう。

 赤山禅院はお寺なのに鳥居があるちょっと不思議な場所です。参道の両側が楓の並木で、見事な紅葉のトンネルを作っています。池の周りや境内にも楓の巨木が多くあります。

 門跡寺院の曼殊院は枯山水の白砂に楓の古木がかかる庭が見事。門跡寺院とは貴族・皇族が住職を務める特定の寺院です。幽霊画の掛け軸があることでも有名です。

 そして圓光寺ですが、山門からは想像できないような紅葉の庭が広がっています。もう紅葉の洪水といった感じです。写真の十牛の庭は、広間から見ると完成されつくした絵、屏風のようです。手前に配された岩と植え込み、どこまでも続くかのような紅葉、室内に敷かれた緋毛氈。それをトリミングするかのように庇と柱がシルエットになって仕上げます。水琴窟も人気です。

 次に詩仙堂ですが、江戸初期の文人石川丈山が隠棲した山荘だったので、あまり寺らしい設えではありません。広間から見る白砂とその後ろのこんもりした刈り込まれた皐月のコントラストが有名ですが、秋はさらに後ろに紅葉が広がります。庭からの紅葉と建物の対比も美しい。詩仙堂と言えば元祖鹿威(ししおど)しがあまりにも有名で、時々低い音色を響かせています。

 詩仙堂の隣にある八大神社は、宮本武蔵が吉岡一門との決闘、つまり「一乗寺下り松」の決闘の前に立ち寄ったとされています。若々しい宮本武蔵像は、決闘から400年を記念して2003年に建立されました。下り松は当時境内にあったそうです。紅葉は社殿のすぐ横に楓の巨木があります。この一本だけですが、緑の木々の中で鮮やかです。

 最後に金福寺は、枯山水の庭とそこからかなり高台に松尾芭蕉と鉄舟が親交を深めた芭蕉庵と呼ばれる茅葺の草庵があり、その高低差がある庭が特徴です。京都の庭園は築山があって高低差がつけてあるのですが、このスペースでこれだけの起伏はあまり見かけません。枯山水の横と芭蕉庵を取り囲むように楓を配してあります。与謝蕪村の墓所があり参拝できます。

 山は暮れて野は黄昏(たそがれ)の薄(すすき)かな

圓光寺周辺の紅葉スポット
交通手段 圓光寺へは、市バス5番「一乗寺下り松町」下車 徒歩7分。叡山電車「一乗寺」下車 徒歩15分

小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。

2013.09.23(月)