やらない自分ということでいうと、前々から考えていることがあります。運転免許証の自主返納です。
自分で言うのもなんですが、僕は運転技術には自信があります。安全運転で。だから周囲の人たちも「ひろみさんなら、急いで免許返納しなくても大丈夫ですよ」と言ってくれています。
もちろん悪い気はしないですが、そう言ってもらえているうちが花だろうとも思います。何かあってから「あの時に返しておけばよかったな」というふうには後悔したくないのです。
70~74歳で免許更新をする際には高齢者講習があるのも、個人的には悩ましい問題です。経験者の知人たちから話を聞くうちに、自分が高齢者講習で「あんた、どこかで見たことある顔だな」「あれ、郷ひろみに似てないか?」と取り囲まれる妄想が膨らんでしまい、ますます返納に心が傾いていくという……。
まあ、数年後には「あんなこと言っていたのに返納していないじゃん」とツッコまれているかもしれません。僕も「♪ゴメンなかったことにして~」と、『なかったコトにして』(2000年)の歌詞で言い訳していたりして(笑)。とはいえ、僕はことのほか慎重な性格ですからね。いまのところ高齢者講習は予定にありません。
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『なかったコトにして』作詞・森浩美、作曲・DANCE☆MAN
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郷ひろみの完成形とは
仕事の引き際についても、まったく考えないわけではありません。免許返納の話ではありませんが、僕は人から肩を叩かれるのではなく、自分で自分の肩を叩きたいのです。
最近ふと、だんだんフェードアウトしていくのでなく、ずっと突っ走っていきなりやめちゃうのもいいよな、と思ったこともありました。周りからしたら「まさか」という展開ですよね。
でも、問題はその時期です。幸い、体のキレが悪くなったとか衰えを感じることはないですし、数年後も今と同じパフォーマンスができるだろうと思える自分がいます。
それに、いくら先を想定してみても、予期せぬ流れになることがあるのは何度も経験しています。
とにかく、郷ひろみを見てきた人に「ひろみはもう十分やってくれたよね」と思ってもらえるところまでは、全力で突っ走りたい。その上で、難しいけれど自分自身の声に耳を傾けながら、引き際を見定められたらいいですよね。
やっぱり僕の最大の目標は、「郷ひろみを続けること」なんです。郷ひろみの完成形がどんなものか、完成したと思える日が来るのかもわからない。宇宙みたいなものなんです(笑)。僕という存在は、小さな地球の中の日本の、小さな点でしかない。でもその志は、郷ひろみを続ける限り、壮大でありたい。そう思っています。
2022.06.07(火)
文=「文藝春秋」編集部