僕はツアーの最中、あと何本ステージが残っているかと数えることがありません。スタッフに聞くこともない。毎回違った自分と出会えることに加えて、退屈しないショーを作っているからです。

 驕った言い方に聞こえるかもしれませんが、僕が退屈しないなら、見てくれている人も退屈しないんですよ。僕自身が飽きたと思えば、見る人もどこかで「あれ?」と感じるかもしれません。僕自身が毎回、新鮮な気持ちで立っていれば、見る人も僕の周りで働く人たちも、以心伝心で同じような気持ちになってくれると感じています。

 こうやって、郷ひろみというものを貪欲に追い求めている今の自分がいるのは、ものすごく幸せなことですよね。こういう自分を見つけてくれた「芸能界の生みの親」への感謝は尽きません。

 

 50代後半から「黄金の60代」を打ち出したように、そろそろ70代を考える時期に入ってきました。

運転免許証は返納?

 黄金の上ということでいうと、「プラチナの70代」でしょうか。

 一緒に仕事をするのも、自分より若い人が圧倒的に多くなりました。僕にないものを持っている人や感度の高い人がたくさんいるので、素晴らしいなと思ったら自分も取り入れようと意識しています。一般の方からも「こういう言葉遣いはキレイだな、僕に足りないところだな」といったように学ぶことは多いです。

 一方で、この先のロールモデルのような人はいないです。僕がデビューした頃は歌う人と踊る人がはっきり分かれていて、歌って踊るというのはまだ珍しい時代でした。さらにそれを66歳まで続けてきたら、比べるような人がいない存在になったと言われます。

 もともと僕は、他人と自分を比較するのはナンセンスだという考えです。だから卑屈な劣等感を抱くこともないし、間違った優越感に浸ることもない。

 どうせ比較するなら、自分自身がいいですね。これをやった自分とやらない自分ではどうだろう、と想像を働かせるということです。

2022.06.07(火)
文=「文藝春秋」編集部