デビュー50周年の郷ひろみ66歳が『お嫁サンバ』に覚えた強烈な違和感「意味がわからない、これはないよ!」 から続く
「“郷ひろみ”はジャニーさんが見つけてくれた天職です」。「文藝春秋」2022年5月号より、歌手の郷ひろみさんによる手記を全文転載します。(全2回の2回目/前編から続く)
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「黄金の60代」というフレーズを掲げてから10年近く、断酒も含め、人生を黄金色に輝かせるためにいろんなことを実行してきました。何か一つだけで光り輝くほど人生は簡単ではないし、即効性があるものもありません。「これから最高の時がやってくるんだ」とプロセスを楽しみながら過ごし、60代も後半に入った頃からようやく、言葉どおりの実感が伴ってきました。
4月から50周年を記念するツアーが始まり、全国で約60ステージに立てることもその一つです。コロナ禍でもマスクを着けて足を運んでくれるファンがいることを思うと、いつにも増して喜びを感じます。
僕がただ50年歌い続けるだけであれば、それほど難しいことではありません。人生100年時代、健康でいれば流れる時間ですから。
でも、その間ずっとファンクラブが続いてきたという事実は、相手がいて初めて成立することであり、通過点という一言で済ませられる数字ではなくなります。僕一人では絶対に成し遂げられなかった記録を、ファンと分かち合える幸せ。これこそが人生の黄金色の輝きだなと、感慨深いものがあります。
ジャニーさんからの助言
ここまで語ってきたすべてのことは、原武裕美という一人の少年が郷ひろみにならなければ始まりませんでした。そういう意味で、僕にとって「芸能界の生みの親」である故・ジャニー喜多川さんとの出会いは、とても大きなものでした。
高校に進学したばかりの少年が、軽い気持ちで映画のオーディションに参加して落選。けれど、それを見ていたジャニーさんが声をかけ、少年はジャニーズ事務所の合宿所を初めて訪れた——それが僕の人生のターニングポイントとなりました。1971年春のことです。
2022.06.07(火)
文=「文藝春秋」編集部