【DVDベスト3】

『ローマの休日』(1953)

監督:ウィリアム・ワイラー。共演:グレゴリー・ペック、エディ・アルバート、ハーコート・ウィリアムズ。

「よくできたおとぎ話」と決めつけるのは簡単だが、この映画はそこだけにとどまらない。ロード・ムービーの味わいやルビッチ・コメディのタッチなどがそこかしこにちりばめられている。新聞記者のペックと王女ヘプバーンが、ヴェスパにふたり乗りをしてローマ中を走りまわるシーンはその見本。戦後間もないイタリアの混沌も、しっかりと描き出されている。

『ティファニーで朝食を』(1961)

 監督:ブレイク・エドワーズ。共演:ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、ミッキー・ルーニー。

 原作はトルーマン・カポーティ。主人公ホリー・ゴライトリー役の候補にはマリリン・モンローも挙がっていた。が、これはやはりオードリー・ヘプバーンの当たり役。ジヴァンシーのドレスを着て〈ティファニーズ〉の前でデーニッシュを食べる場面や、〈ムーン・リヴァー〉をひとりで歌う場面は、この人ならでは。60年代初めのニューヨークの空気も伝わってくる。

『シャレード』(1963)

 監督:スタンリー・ドーネン。共演:ケイリー・グラント、ウォルター・マッソー、ジェームズ・コバーン。

 謎の紳士グラントが59歳で、美貌の未亡人ヘプバーンが34歳。アクション・コメディにしては主人公が年をとりすぎているように思われるかもしれないが、監督のドーネンは、そんなふたりに曲者の脇役をたっぷり絡ませ、青臭さのかけらもない娯楽作品を悠々と撮り上げている。60年代前半は、逃避主義とそしられることを恐れない映画が数多く撮られていた。

2022.05.20(金)
文=芝山幹郎