若い頃とは恋愛のかたちは違うけれど、「二人でいること」は変わらない

 悲しい過去から心に深い傷を抱えながらも、小さな海辺の町で静かに暮らす50才目前の女性。そんな彼女に、ある日突然、空から降ってきた隕石にぶつかるという奇跡のような出来事が。そして、見知らぬ男性が吹く草笛の音も、彼女の人生に起こる小さな奇跡の始まりだった──。

 脚本家・安倍照雄と平山秀幸監督が10年以上あたためてきたという映画『ツユクサ』は、主演の小林聡美さん、共演の松重豊さん、そして平岩紙さん、江口のりこさんといった多くの熟練俳優がていねいに描き出す大人たちのラブストーリー。作品について、また大人になるということについて、小林さん、松重さんに語っていただきました。

あのロケーションが育んでくれた物語だった

 小林聡美さん(以下小林) 『CREA』の読者って20代とか30代が中心なんですよね。こんな〝渋い〟私たちのインタビューで大丈夫かな(笑)。

 松重豊さん(以下松重) 読者の心に響くような言葉、この二人から出てくるかどうか自信ないね(笑)。

──いえいえ、ぜひ人生の先輩としてお願いいたします(笑)。今回の映画も、小林さん演じる五十嵐芙美という50歳を前にした女性と、松重さん演じる篠田吾郎という草笛の上手な男性という、二人の大人のラブストーリーとなっています。舞台となっている町の風景も印象的でしたね。

松重 最近はコロナ禍で気軽に旅に出かけられないし、いつもと違う空の下でものを考えるということもなかなか難しい日々が続いているんですけど、この映画については、やはりあのロケーション、あの自然ありきでしたね。空の色だったり、山の木々の葉のきらめきだったりが、この映画のいちばん大きな要素の一つだったし、その舞台でしか育まれない物語だったという気がします。そこに僕たちが包まれていく感じでした。

小林 主人公の芙美が働く工場がある海辺の町の雰囲気もよかったですね。どこかちょっとうらさびしくもあり、でも温かさも感じるような不思議な感じの海で、あの雰囲気が映画のテイストを決定してくれたというか。

──アパートで芙美が料理を作り、吾郎と一緒に食べるシーンも、芙美のていねいな暮らしぶりが分かるようでした。

小林 芙美という役柄を理解するうえで、彼女が暮らしている部屋の整頓されている感じや暮らし方は、とても参考になりましたね。役をより理解するヒントをもらえたような。ただ、あのアパート、めちゃくちゃ暑かったんですよ!

松重 そうそう、暑かったよね〜!

小林 40度ぐらいあったらしいですよ(笑)。私たちはマスクを外せるタイミングがあったから何とかしのげましたけど、スタッフさんはずっとマスクしていたから本当に大変だったと思います。

2022.04.26(火)
文=張替裕子(giraffe)
撮影=山元茂樹