さすがに大丈夫でしょと思う気持ちと、もしダメだと言われたらどうしようという不安な気持ちが入り交じるなか、恐る恐る「続けていいよね?」と母に尋ねた。

「こうなってしまったら仕方ないでしょ」

「やったー!!」

 手放しでOKとはいかなかったけれど、やっと両親からお許しをもらえてうれしかった。

 それから30数年、幸せなことに、今も声優を続けられている。

 あのときギリギリのタイミングで来た『タッチ』のオーディションで、私の声が録音されたテープの番号は8番だったそうだ。演技的にはそれほどいいというわけではなかったらしいけど……(笑)、ただ「新鮮に聞こえた」「声質がよかった」「番号が末広がりの8だし」「多少の不安はあるけどこの子に賭けてみよう」という意見がまとまって、選んでいただけたそうだ。

 本当に本当にありがとうございます! 勇気をもって決めてくださり大感謝です! 

 そして8という番号を引き当てた私の運!! 

 最後にこの声を与えてくれたお父さんお母さん! みんなみんなありがとう! 

 今でもこのときのことを思うと空に向かって大声で叫びたい、そんな気持ちになる。そういうわけで『タッチ』は、浅倉南ちゃんは、私にとって特別な存在、日髙のり子として生きていくことを許された、恩人のような作品でありキャラクターなのだ。

「みんな怒って帰っちゃうんだよね。約束して、絶対に帰らないって」…声優・日髙のり子が“地獄の苦しみ”を味わった、ETC音声の収録裏話 へ続く

2022.04.17(日)
文=日髙 のり子