※1  1984年~ 85年に放送されていたクイズ番組『SHARPワールドクイズ・カンカンガク学』のレポーターとして全国津々浦々を旅して回っていた当時、奈良公園では鹿せんべいを欲しがる鹿に蹴られ、群馬県宝川温泉では一緒に入浴した赤ちゃん熊にポニーテールの付け根を嚙まれたりと、かなり体を張った仕事をしていた。

 ※2  『超時空』シリーズ第3弾として1984年に放送されたSFアニメ。日髙の声優デビュー作で、異星人の音楽奏者ムジカ・ノヴァを演じた。敵である地球の少年兵と恋に落ちる役どころだった。

 

『タッチ』がつないだ役者人生

『タッチ』に決まったときは、もう安心と思ったんじゃない?と皆さん思われるかもしれない。でもそのときの私は『タッチ』が歴史に残るアニメになるということも知らないし、何より大役を掴んだものの、責任の重さと自分の力のなさに打ちのめされていて、そんなことを気にする余裕など少しもなかった。

 週1回のアフレコはついていくのに精一杯で、ついていけないときは居残りになってO Kが出るまでセリフを言い続け、帰り道は駅まで一人泣きながら歩いた。

 選ばれてうれしいと思ったのは記者発表のときまでで、その後はスタッフの皆さんが選んで失敗だったと思っているんじゃないかと、別の不安で胸がいっぱいだった。

 私のことはさておいて、あだち先生の描かれる漫画の雰囲気を大切にして作られたアニメは、素敵な音楽や主題歌も含めて評判は上々のようだった。私の元にも視聴者の方からのお手紙がたくさん届いたが、私が演じる南が「好き」と言ってくれる人と「嫌いだからやめてほしい」という人が半々で、私は相変わらず喜んだり悲しんだり不安になったりしていた。

 程なくして『タッチ』は人気アニメとなり、私が演じる南も原作ファンの皆さまに受け入れていただけるようになった。それと同時に浅倉南役としての私の仕事もどんどん増えていった。その頃、やっと両親との約束のことを思い出した。ちゃんと確認しなくては! 

2022.04.17(日)
文=日髙 のり子