伴虚無蔵(松重豊)が「大月」にやってきたとき、店頭ではあみん「待つわ」(82年/昭和57年)が流れていたが、翌朝、伴は映画村の橋の上でひなたを待っていた。時代劇を救う存在をずっと待っていたのだろう(第74回)。ひなたがバイトをしていた映画村の休憩室で流れていたのは薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」(81年/昭和56年)(第75回)。
84年、ひなたは条映太秦映画村に就職する。BGMは日本映画誕生に情熱を注ぐ若者たちを描いた朝ドラ『ロマンス』の主題歌、榎木孝明・芹洋子「夢こそ人生」(84年/昭和59年)。「夢をみるのは生きてることさ 忘れちゃいけない夢だけは」と明るく歌われていた。「夢の工場」と称される映画の撮影所にぴったり。昼食時に休憩室で流れているのは吉川晃司「モニカ」(84年/昭和59年)(第79回)。
「そば処 うちいり」では“らしい”「少し古いヒット曲」
ひなたが美咲すみれ(安達祐実)と訪れる「そば処 うちいり」では、よくラジオでヒット曲が流れている。都はるみ・宮崎雅「ふたりの大阪」(81年/昭和56年)、細川たかし「北酒場」(82年/昭和57年)はいずれも演歌のヒット曲(第80回)。「未成年です」とひなたが言う場面のBGMは、わらべ「もしも明日が…。」(83年/昭和58年)。たしかに「わらべ(子ども)」だ。
美咲が愚痴を続ける場面のBGMは中島みゆき「悪女」(81年/昭和56年)。「愛する人よ そばにいて」と歌う前者はなかなか五十嵐文四郎(本郷奏多)に会えないひなたの気持ち、月夜に本音をこぼして涙を流す女を歌う後者は、五十嵐に泣きながら本音を打ち明けるひなたの姿に重なる。少し古いヒット曲が流れるのも居酒屋らしい(第85回)。
弟・桃太郎(青木柚)が高校に入学した92年、条映太秦映画村の休憩室で流れているのは米米クラブ「君がいるだけで」(92年/平成4年)。「月9」のトレンディドラマ『素顔のままで』の主題歌として大ヒットした。この後、上司の榊原誠(平埜生成)から映画村の動員数が激減していることを伝えられるが、恋愛ドラマの隆盛と時代劇の凋落が対比されている(第86回)。
2022.04.14(木)
文=大山 くまお