〈いつも背景にはラジオが…〉『カムカムエヴリバディ』登場楽曲から見えてくる “リアリティ”とは? から続く
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は、祖母・母・娘の3世代にわたる100年のファミリーストーリー。劇中では時代の流れを示すために、ラジオから流れる歌謡曲が効果的に使われていた。途中でCDの時代になっても、あくまでもラジオから流れる曲が中心だった。
「錠一郎も思わず『ええ曲やな』と呟いた」
京都で回転焼き屋を開いたるい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)だが、つましい生活を心がけていたためか、ひなた(少女期・新津ちせ)が大きくなるまで店頭にラジオは置かれていない。
抜群のインパクトがあったのは、テレビから流れてきた子門真人「およげ!たいやきくん」(75年/昭和50年)。るいは12月に入ってから回転焼きの売上減に頭を悩ませていたが、『ひらけ!ポンキッキ』で同曲が流れはじめたのはこの年の10月のこと。12月にリリースされたシングルレコードは爆発的なヒットとなり、世の中にたいやきブームを巻き起こした。売り上げ450万枚という記録はいまだに抜かれていない(第66回)。錠一郎も思わず「ええ曲やな」と呟いていた。
ひなたたちが学校で歌っていたのは山口百恵「禁じられた遊び」(73年/昭和48年)。いわゆる「青い性典路線」の一曲。小学生の頃は男子より女子のほうが進んでいる。
テレビから流れてきたザ・ドリフターズ「ドリフのビバノン音頭」(73年/昭和48年)は、昭和の怪物番組『8時だョ!全員集合』のエンディングテーマとして親しまれた。宇野ゆう子「サザエさん一家」(69年/昭和44年)はアニメ『サザエさん』エンディングテーマ。
風呂上がりのひなたと洗い物をするるいが一緒に歌っていた大杉久美子「かあさんおはよう」はアニメ『母をたずねて三千里』のエンディングテーマ。主人公のマルコが海外に渡ってしまった母親を探す物語は、アメリカに渡った母・安子(上白石萌音)と生き別れたるいの境遇と重なる。
2022.04.14(木)
文=大山 くまお