ひなたが商店街といきいきと歌って踊るのはキャンディーズ「春一番」(76年/昭和51年)。「もうすぐ春ですね 彼を誘ってみませんか」と歌いながら帰宅したひなたは、回転焼きの店「大月」にやってきたビリー(幼少期・幸本澄樹)を英語で誘うことができなかったが、最終回でビリー(城田優)を英語で「回転焼きを食べましょう」と誘うことができた。2025年3月の出来事なので、まさに「春」だ(いずれも第69回)。

 叱られたひなたが錠一郎に謝る場面では、ラジオから川橋啓史「山口さんちのツトム君」(76年/昭和51年)が流れていた。たしかにこの頃のひなたは少し「へん」だった。歌の中のツトム君は離れ離れになっていたママが帰ってきて元気になる(第70回)。

 

ソニーのウォークマンが発売された頃には…

 83年、高校3年生になったひなた(川栄李奈)が「あかにし」の店頭で新発売の「ウォーキング・メン(ウォークマンのこと)」を見ているとき、店内のラジオでシブがき隊「NAI・NAI16」(82年/昭和57年)が流れている。ソニーのウォークマンが発売されたのは79年。「あかにし」の店頭に並んでいたのは1号機の「TPS-L2」だった。ひなたは買う金が「NAI・NAI」。

 映画村帰りのひなたが歌っていたのはBORO「大阪で生まれた女」(79年/昭和54年)の替え歌。青春の終わりと別れを歌ったブルージーな曲。歌の中の“女”は一度大阪を捨てるが、やがて大阪に戻ってくる(いずれも第71回)。なお、この回から「大月」の店先にも小さなトランジスタラジオがあるのが見える。

「ミス条映コンテスト」に出るとひなたが宣言したとき、ラジオからH2O「想い出がいっぱい」(83年/昭和58年)が流れていた。透明感のあるハーモニーで「大人の階段昇る 君はまだシンデレラさ」と歌われていたが、ひなたは時代劇の世界への第一歩を踏み出して大人の階段をひとつ昇る(第73回)。

2022.04.14(木)
文=大山 くまお