「ムーンライト伝説」「愛は勝つ」「涙のキッス」…そして時代は平成へ

 ひなたがお化け屋敷の企画を出したときのBGMはアニメ『美少女戦士セーラームーン』の主題歌、DALI「ムーンライト伝説」(92年/平成4年)。「大月」ひなたが映画村に一筋の「光」を与える。

 大部屋俳優としての長い下積みにくじけそうになっている五十嵐が去った後の休憩室で流れていたのは、KAN「愛は勝つ」(90年/平成2年)。「どんなに困難でくじけそうでも 信じることさ 必ず最後に愛は勝つ」と歌われるが、ひなたと五十嵐の時代劇(自分の進む道)への「愛」が試されている場面だった(第88回)。

「うちいり」で飲んでいる美咲と星川凛太朗(徳重聡)に五十嵐が酔って絡む場面のBGMはサザンオールスターズ「涙のキッス」(92年/平成4年)。ひなたと別れるのは「夏の運命(さだめ)」だったのかもしれない(第89回)。やがて五十嵐はひなたと別れて撮影所を去るが、後にハリウッドのアクション助手として撮影所に戻ってくる。彼の「愛」が勝ったのだろう。

 92年の冬、るいが「あかにし」でテレビを値切る場面で流れるのは山下達郎「クリスマス・イブ」(83年/昭和58年)。88年にJR東海のCMで起用されてリバイバルヒットした。「きっと君は来ない」の「君」は、桃太郎にとっての片思いの相手・藤井小夜子(新川優愛)なのかも。

 年が明けて、動員数が減り続ける映画村の休憩所で流れているのはZARD「負けないで」(93年/平成5年)。滅びゆく時代劇とそこで踏ん張ろうとするひなたへのエールのよう。この後、ひなたは虚無蔵の激励と平川唯一(さだまさし)のアドバイスをもとに英語の勉強を始める(第91回)。

 

朝ドラとも重なっていくひなた

 99年、ひなたが店番をしていた「大月」のラジオから流れるのは速水けんたろう・茂森あゆみ「だんご3兄弟」(99年/平成11年)。「うちいり」で榊原が野田一恵(三浦透子)と話そうと待っているとき、宇多田ヒカル「Automatic」(98年/平成10年)が流れている。榊原の一恵に対する態度は「あいまいな態度がまだ不安にさせるから」という歌詞のとおり(いずれも第100回)。

2022.04.14(木)
文=大山 くまお