情感溢れる食まわりの写真撮影で活躍中のフォトグラファー、ローラン麻奈さん。フランス人のローラン・ファビアンさんと5年前に知り合い、結婚。築60年の古民家で暮らしている。
フランス人の夫とアペロを
2階のお座敷のソファでアペロを。料理はどれも手でつまめるように。ほとんど買ってきたものを並べるだけの気軽さこそ、人を頻繁に呼べる秘訣かもしれない。
インドや中国などアジアを旅し、エスニックテイスト好きな麻奈さんの食生活は、結婚で激変。
「人生、何が起こるか分かりません。いまは食生活にもフレンチの嵐が押し寄せています」
集まりのメニューを考えるときは必ずイラストを描く。頭の整理になる。
レバーペースト、薄切りのナスをカリカリに素揚げした“ナスのフライ”、生ハム&グリッシーニなど。リンゴもこんな風に切ると食べやすく盛りつけても愛らしい。
最近、ふたりで食事を楽しむことが多くなったが、以前は友人知人がひっきりなしに訪れる家だった。
「ファビアンに教えてもらったのが、ふたりでも友人を交えても用意するアペロの楽しみです。フランス人はとにかくおしゃべりと食べることが好き。食卓につく前に、必ずソファで飲み物とスナックを。このアペロタイムがすごく長い!」
コニャックをシュウェップスで割った、シャラント地方でポピュラーな飲み物“コニャック・シュウェップス”。飲みやすく、ある意味、キケンな食前酒。
だから、テーブルに呼ばれて立ち上がるころには、皆「もうお腹いっぱい」。「でも、食事もしっかり楽しみます(笑)」
台所に続く和室をダイニングに。ここの障子を開ければ、手作りの棚が。麻奈さんが海外で集めたり、蚤の市で選んだりした器類がずらり。右の小さな棚には、お茶の道具を。紅茶、日本茶、中国茶用と幅広く集めている。
ローラン家の古民家は、元・鼻緒問屋の店舗と住居部分の2棟分。
醸し出す雰囲気が部屋ごとにそれぞれ異なり、暮らしを彩る要素になっている。
ダイニングには床の間が。ファビアンさんのご両親から贈られたゴブラン織を掛け軸がわりに。右のトルコランプが麻奈さんらしい。
元店舗部分にインド製の棚が。純日本家屋にもしっくりと収まっている。
食事をする場所は台所と、それに続く和室、ソファを置いている2階のお座敷、その奥の洋室と、4箇所も。
台所の作業台でくつろぐファビアンさん。「いちばん狭いのに、なぜか最も人が集まってきます」
2022.04.11(月)
Text=Mika Kitamura
Photographs, Food coordinate & Styling=LAURENT Mana
CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
この記事の掲載号
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