広瀬アリス「すずは直感型」
広瀬すず「台本はきれいなままです。お姉ちゃんは、台本にはどんなことを書いているの?」
広瀬アリス「その役柄の職業について調べたことを書いたり、服装について書いたり」
という会話が収録されている。
広瀬すずが『ちはやふる』『チア☆ダン』『四月は君の嘘』などスター性のある天才少女役で名をなしたのに対して、広瀬アリスは社会の中で迷い、思い悩む女性像を演じることで高い評価を得てきた。
広瀬アリスが長けている演技
俳優とは不思議な職業だ。二人の顔立ちは「広瀬すず寄りのアリス」と互いに写真写りの似た写真をツイッターに上げてファンを迷わせるほど似ているのに、役者としてまとう雰囲気、演技の質はまったくちがう。そして『ラジエーションハウス』シーズン2の第8話で、過剰なダイエットに苦しむ乃愛に、思春期の健康の大切さを説く裕乃を演じる広瀬アリスの演技は、その特性である哀しみや共感をよく表現していた。
それは医療ドラマとして視聴層の10代に送る正しいメッセージであると同時に、「昔の自分」に語りかけて救済するようなシーンになっていたと思う。多くの視聴者が、裕乃という役は結果的にはまちがいなく「アリス寄り」の役であり、広瀬アリスで正解だった、と納得する演技だった。
OLたちのヤンキーバトルを描いた映画『地獄の花園』の主演は永野芽郁だが、バイプレイヤーの広瀬アリスはマニッシュでヒロイックな一匹狼でありつつ、自分の限界に思い悩む女性像を魅力的に演じ、準ヒロインとして高い評価を受けた。従来、小柄な女優は可愛らしさ、長身のスタイリッシュな女優は格好良い女を演じることが多いものだが、広瀬姉妹の場合には小柄な広瀬すずが「強い」演技を得意とし、長身の広瀬アリスが「強さの中にある弱さ、迷い」の演技に長けているのは不思議なところだ。
迷い悩みながら生きるリアルな女性の名前として
かつては筆者も広瀬すずは主演型、広瀬アリスは助演型かもしれないと思っていたのだが、今年の4月期の広瀬アリスは、フジテレビ系「恋なんて、本気でやってどうするの?」で主演すると同時に、日テレ系連続ドラマ「探偵が早すぎる~春のトリック返し祭り~」でダブル主演。なんと1クールに2本の主演ドラマが放送されるという、過去のスター女優でもそうはないほど主演女優として引く手あまたになっている。
2022.03.18(金)
文=CDB