自戒をこめて書くなら、そうした揶揄は匿名ネットだけではなく、芸能メディアの中にもあり、姉妹芸能人の「格差」を意図的に誇張し、「女の嫉妬が」という定型に落とし込む記事の手法は一種の手癖のようになっている面もある。そうした声に翻弄され、健康を害していく若い女性を描くことは、広瀬裕乃役に広瀬アリスをキャスティングしたドラマスタッフからのメッセージにも思えた。

 

広瀬すず的なキャラクターを、アリスが演じる?

 実は原作コミックは、妹の広瀬すずが『海街diary』で名を知られた2015年にスタートしており、広瀬裕乃のキャラクターデザインは髪型や身長など、どちらかと言えば当時ブレイク中だった広瀬すずを思わせると言えなくもない。公式には誰がモデルと明言されているわけではないが、ドラマのキャスティング発表当時、見方によっては見るからに広瀬すず的なキャラクターを広瀬アリスが演じるという気まずい構図にも見えた。

 だが、シリーズの好評や、シーズン2の製作、そして映画化という成功を収めた今、「ほらね、裕乃は私にしかできないでしょ?説得力あったでしょ?笑」という冗談めかした広瀬アリスのツイートは、「この役を演じきった、自分の中でつかまえた」という自信の裏返しにも見えた。

 それは脚本が登場人物に広瀬アリス的な状況を重ねたからだけではない。広瀬アリスが演じる広瀬裕乃は、自分自身もチームの中で、迷い続けるがゆえに患者の不安に寄り添うことができるという人物像になっているのだが、これは俳優としての広瀬アリスの演技の特性にぴったりと重なっている。

女優としてのタイプの違い

 天才型と努力型、に俳優を分けるとしたら、広瀬すずは前者で広瀬アリスは後者だ。広瀬すずのエッセイ『負けずぎらい。』に収録された広瀬姉妹の対談でも、

広瀬すず「(二人の女優としてのタイプは)違うと思います。お姉ちゃんは考えて考えて…というタイプ。台本にもたくさん書き込みがあって、お風呂で読んでいる時もずっと出てこない」

2022.03.18(金)
文=CDB