――曲を作っているときはどうですか?

大塚 最終的にミックスをやって、ああ、よくできたな、というときだけが唯一喜びを感じられる瞬間ですね。だから基本、仕事は楽しくないです(笑)。

――なるほど(笑)。でも、仕事が楽しくないとしたら、それでもデビューから19年間、ここまで活動を続けることができたのはなぜなんでしょうか?

大塚 目標が達成できてないから、ということだと思います。

自信を持って「好き」と言ってもらいたい

――目標とは?

大塚 やっぱり自分自身が満足できるレベルになることと、それが世間のイメージともイコールになることですね。自分でも自分のことをすごく好きだって言いきれて、ほかの人たちにも自信を持って、「大塚愛好きなんだよね」って言ってもらえるようなアーティストになりたい。だから、それは今も達成できてないんです。

――しかし、大塚さんのファンもかなり多いと思うのですが。

 

大塚 誰かから「どのアーティストが好き?」って聞かれた時に、本当は好きでいてくれていても、やっぱり「大塚愛!」とは言いにくいところがあるのは、自分の中でもわかっているんです。そこで私の名前を出したら、「へぇー……」ってなっちゃう雰囲気というか。最近は時代も変わって、今の若い人たちはそういうのを気にせずに言えるようになってるというのも、何となく認識はしてるんですけど。

――そういう空気があるとすれば、それはなぜだと思われますか?

大塚 何なんでしょうね。でもやっぱり、歌唱力がすごいとか、サウンドがもうめちゃくちゃかっこいいとか、そういうアーティストのことを好きって言うと、ああ、そうだよねって共感を得られると思うんです。だから、かっこいいの定義もよくわからないんですけど、みんなが「すごくいい曲だよね」というものを出したときに、初めて「大塚愛とは恥ずかしくて言えない」みたいなものが取っ払われるのかなという気がします。

2022.01.24(月)
文=松永 怜