「“私にして良かった”と思ってもらえるよう、一生懸命やっています」
――2021年は『空白』や『おかえりモネ』といった作品で、伊東さんの演技を絶賛する声が多くあがっていました。それについてどう感じましたか。
確かにSNSとかで感想をいただくこともすごく多かったのですが、あまり自分自身のことのように思えないんですよね(笑)。
でも、思ってもいなかったようなことを言ってくださったりもしたので、とても嬉しい気持ちになりました。昔からずっと、いただいた役に対して「別の人にすれば良かった」と思われたらすごく申し訳ないし悔しいので、「私にして良かった」と思ってもらえるように、ひとつひとつ一生懸命やっています。
――取り巻く環境の変化は感じましたか?
いや、全然変わってないです。でも……私は今高校生なんですが、クラスメイトは私の仕事のことを知らないと思ってたんです。そうしたらこの前「え、高校に入学してすぐにみんな知ってたよ」って言われて(笑)。
あと、友達に誕生日のプレゼントをもらった時に手紙が付いていて、そこに私の仕事のことが書いてあったり、会話をしている時に「いつ勉強してるの?」って訊かれたので「え、みんなと変わらず普通にしてるよ」って答えたら、「だってお仕事もあるよね?」って言われたり。そういうやりとりを経て、「あ、知ってくれているんだ」って思うことがいくつかありました。
――5歳の時に子役の事務所に入ったことがこのお仕事を始めるきっかけだったそうですね。
はい。両親がオーディションに連れていってくれて、そこからお芝居をするようになりました。最初の頃のことはそんなに覚えていないのですが……でも、本を読むのも好きなので、お芝居をすることで自分がその本の中の登場人物になれるのがすごく嬉しかったし、楽しかったっていうのは覚えています。それでお芝居が好きになりました。
――そこから11年くらいが経ち、様々な作品に出演されていますが、転機になった作品は何だと思いますか?
『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野(量太)監督に、「家族を演じる共演者と本物の家族になって欲しい」って言われて。それまでは、自分が演じる役を本物にするっていう役作りを考えたことがなかったんです。その時に、役として演じるのではなく、自然な自分として存在する、ということを学びました。
その中野監督の言葉は今でもはっきり覚えていて。去年出演した「ひきこもり先生」の時は、自分と同じく生徒を演じる共演者の方たちと、グループLINEでやりとりをしてみたり、待ち時間に話したり、お芝居の中だけじゃなく実際に学校の友達のような関係性が築けたらいいなって思いながら撮影をしていました。
あと、『湯を沸かすほどの熱い愛』の時には、母から「毎日台本を読んでみたら?」って言われて読み始めたら、昨日までは理解できなかった気持ちがわかってきたり、「あ、こういう感情もあるんじゃないか」という新たな発見が生まれるようになって。それ以来、“毎日台本を読むこと”は大事にしています。
『島々清しゃ』では、映画の舞台である沖縄での撮影中、毎日フルートを吹いたりすることで、役にすっと近づけたように感じます。それに、安藤サクラさんと山田真歩さんと一緒にお芝居をすることができて、たくさんのことを学べたので、「おふたりみたいなお芝居ができるようになりたいな」と強く思いました。
『空白』の撮影に入る少し前は、学業に専念するためにお芝居を休んでいた時期で、その後初めての仕事が『空白』だったので不安が大きかったのですが、楽しくお芝居ができたので、「やっぱり私はお芝居がすごく好きなんだな」と感じ、これからもより頑張りたいと思えた作品でした。
2022.01.21(金)
文=小松香里
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=伏屋陽子(ESPER)
スタイリスト=山口香穂