たけし・さんま世紀末特別番組‼ 世界超偉人500万人伝説「笑える度200% 驚く度300% シリーズ最高作だゾ」㊙オナラ大王vs103歳の超好色老人▽UFOを着陸させる男vs宇宙警察長官vs㊙雲を消す男▽チンチン音頭vs㊙インチキ医

 新聞のテレビ番組表、日本テレビ、1997年4月2日、午後7時から8時54分までの番組の「紹介」である。ここでは意味はもとめられていない。何かを伝えようとする気もない。なのに冗談のつもりでもなさそうだから世も末なのである。

 限りなくバカの方へ突進する、あるいは、けたたましい無内容をめざして空転するテレビと、それを軽んじつつけっこう見ている私たちの関係を、ナンシー関はこんなふうに言語化した。

 

〈 こういうのってハナでせせら笑ってもダメなんである。相手はこれだけズレた事をやってる人間なんだから「ハナでせせら」という意味など通じない。無視しても無駄。怒らないとだめなんだけど、こんなもの怒るの嫌だしなあ、という「とほほー」によって出来る国民感情の弛緩部分に巣喰っているのである

(『テレビ消灯時間』) 〉

「現代史」をテレビ評で書く

 最初は売り込みに際し過剰におずおずとして、不審がられながら何時間も無言のまま「ビックリハウス」編集部で座っていたりした関直美だが、ナンシー関になりかわって仕事は増えた。

 1988年、26歳頃には「週刊プレイボーイ」「月刊カドカワ」「サンデー毎日」等から注文を受け、89年には「月刊プレイボーイ」で内藤陳の読書コラム「読まずに死ねるか」のイラストを担当した。多くは「消しゴム版画」の注文であった。ステッドラー社の大きなサイズの消しゴムの版面に人物の特徴を掴み出し、そこに「ひとこと」批評的な文言を添える手法(プロ野球監督夫人で、テレビでの奔放・乱暴な発言で一時知られた野村沙知代の肖像に「おだまり」、またオウム真理教の標的にされながら実態解明につとめたジャーナリスト江川紹子には「紹子の春」と添えるなど)が受け、連載13本におよんだ。

 89年、ヒノデワシという文具メーカーがナンシーを訪ね、版画用の消しゴムをつくりたいと申し出た。試行錯誤の末に「はんけしくん」の商品名で売り出し、売上げの10パーセントを占める主力商品となった。だがナンシー関は、この頃からテレビ批評文に力を入れ、「消しゴム版画」の方は従、いわば「サインがわり」または「商標」と化していた。

2021.12.11(土)
文=関川 夏央