みんな誰かと疑似姉妹・兄弟・親子であってもいい

 阿佐ヶ谷姉妹の暮らしぶりをみていると、つくづく家族とは血縁や婚姻ではないのだなと感じます。まさにこれは、既存の枠組みに囚われない、新しい家族のかたちのひとつの提案。二人のように、夫婦でも、実の姉妹でもなく、血は繋がっていないけども、生活を共にしながらお互いを必要とし合う関係性を誰かと築けたら、それはとても素敵なこと。そんな関係を、法律に頼ることなく築けるなんて、ある意味理想的です。

 婚姻制度を利用した人は、たいていは一緒に生きたい、歩んでいきたいという相手に出会えたということだと思います。それはとてもすごいこと。でも、一緒に生きたい、歩んでいきたいと思える相手って、恋愛関係ではない相手であってもいいはずですよね。

  「家族」の概念は、血縁・婚姻・養子などの制度で定義されるものだと思いがちだけど、そういうものを“ゆるぎない絆”と考えるのはナンセンスなのかもしれません。だって人々の関係性は本来、法の枠組みの外にあるもの。

 未来の「家族」は興味や趣味、価値観を共有できる関係、お互いを助け合う関係など、もっと緩やかな人間関係をベースにした概念へと変わっていってもいいと思います。阿佐ヶ谷姉妹の二人がもともと他人でありながら姉妹という疑似関係を結んで、ビジネスだけでなくプライベートでも、ともに生活しているというのは、その希望でもあります。これからの時代、家族や結婚のあり方が自分に合うようにカスタマイズできる制度や支援ができたら、もっと生きやすくなる人が増えるはずです。

 阿佐ヶ谷姉妹はたびたび、母や独り者の友達とみんなで住む「阿佐ヶ谷ハイム」構想を語っています。そういった周りの人と助け合いながら暮らしていこうとする“拡張家族”的な姿勢もこれからの生き方のロールモデルになるかもしれません。

 今は個人情報保護や防犯への意識が高まりから「他人と不用意にかかわりたくない」と思ったり、デジタル端末の普及で家族間でも互いに干渉しない個人志向が強まっています。でも阿佐ヶ谷姉妹をみていると、好きな人たちと時間や空間と共有するのも悪くないな、と思えてきます。自助ばかり国から求められるのは嫌だけど、家族のような仲間と一緒に生活できるなら、自然と楽しく互助ができそうな気がしませんか?

よるドラ「阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし」

毎週月曜 総合22:45~23:15 放送中
出演:木村多江 安藤玉恵ほか
https://www.nhk.jp/p/drama-nohohon

綿貫大介

編集&ライター。TVウォッチャー。著書に『ボクたちのドラマシリーズ』がある。
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2021.11.29(月)
文=綿貫大介