実は、表情豊かで愛嬌たっぷり!
ワーキングホリデーで訪れたニュージーランドから帰国した後は、日本各地の牧場もめぐるようになった平林さん。ここからは、国内の観光牧場で撮影した羊たちの写真とともに、癒しの理由をキーワード別で聞いていきます。
まずは、癒しの理由①「表情・感情豊か、優しい顔」。
平林さんの写真を見ていると、羊それぞれに表情があることがわかります。優しい顔つきで、みんなとても穏やか。まるで微笑んでいるような表情がたくさん。
「そう見えるのは、羊の口角が上がっているからなんです。立ったまま見下ろすと口元が見えないのでわかりにくいですが、羊と目線が合うくらいに、しゃがんでみると、本当に笑っているみたいに見えます。つぶらな瞳もかわいらしくて、すごい癒されます」
その表情は、にっこり笑顔に見えたり、はにかんでいるようだったり。さらに安堵感あふれるような表情も。いろいろな微笑みに心が和まされます。
「羊は笑って見えるだけでなく、感情そのものも豊か。気の合う仲間や家族といると安心したり、楽しかったり。気候がいいときは、陽射しやそよぐ風が気持ちいいとか感じているのでしょう。そのときどきで異なる表情を見せてくれます。かわいくておもしろい表情が反芻しているとき。口を開けて笑っているような顔になるんです」
反芻とは、羊などの草食動物が食べた草を胃から口の中に戻し、咀嚼してまた食べること。食べた草を胃の中の微生物で発酵させて栄養に変えるため、食べた草が分解しやすいよう、反芻して噛み戻します。
「食べるときはとにかくたくさん食べて、後でゆっくり反芻する。これを1日中何度も繰り返します。繊維の多い草は消化しにくいので、いったん飲み込んでから、口中に戻して奥歯ですり潰す。そのとき、口が左右にリズミカルに動いて、まるで笑っているように見えるんです。
羊は草を食べ始めるとしばらく下を向いていますが、食べ終わると必ず顔をあげて反芻するので、そのタイミングが観察や写真を撮るチャンス。羊が反芻しているときはリラックスしているそうなので、表情がゆるくて、ユニークなんですよね」
2021.10.30(土)
文=中村美枝 (JAM SESSION)
写真=平林美紀