ただただ、ぼーっと眺めたい平和な世界

 癒しの理由④「自然・深呼吸・牧歌的で平和」。

 気持ちのいい風景と羊たち。この組み合わせに癒されたら、日頃のもやもやもすっかり解消できそうです。

「羊は平和を好む動物なので、たくさんの羊が共に暮らしていても、ほとんどハプニングも事件も起こらないですし、常に平穏。ただただぼーつと見ていられます。運命のままに生きていて、人間界とは違う世界で生きているというのか。そんな牧歌的で平和を感じる羊の世界に思いをはせると、現実を忘れられるんです」

 そう話す平林さんは、先日訪れた牧場でその思いをさらに実感したそう。

「コロナ禍でなかなか遠出できないので、久しぶりに近場の牧場に行きました。そこで感じたのは、動物たちはコロナなんて関係ない世界にいるということ。豊かな自然の中で、いつもと変わらずに暮らす羊たちに、とても癒されました」

 ところで、日本の牧場ではどんな品種の羊が見られるのでしょう。

「めずらしい品種の羊を飼育する牧場もありますが、日本で飼育されている主な品種は、顔が白いコリデールと、顔が黒いサフォーク。コリデールはおとなしく人懐っこいので、観光牧場で多く見られます。品種は同じでも、牧場の個性や風景、環境で見え方も違ってくる。自然と羊の調和をいろいろな牧場で楽しめば、それぞれの癒しを感じられると思います」

 そして、季節によっても見どころが違うので、年間を通して風景や羊たちの姿を楽しいでほしいと平林さんは話します。

「春は桜や芽吹き始めた緑が気持ちよく、生まれたばかりの子羊がかわいい季節。夏は暑くて羊たちもバテ気味ですが、高原の緑とそよぐ風はやっぱり心地いいです。冬は緑がなくなるので風景は寂しいものの、いちばんもこもこした羊、2月なら生まれたての赤ちゃんにも出会えます」

 そして秋。羊にとっても過ごしやすいシーズンでもあるそうです。さてどんな風景が広がっているのでしょう。

2021.10.30(土)
文=中村美枝 (JAM SESSION)
写真=平林美紀