10月8日(金)から公開される、園 子温のハリウッドデビュー作である『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』。
ニコラス・ケイジのふんどし、ママチャリ、爆発……。日本を想起させる描写でありながらカオスな世界観、物語の展開、最高にクレイジーかつファンタスティックなこの作品の中で、一際目を引くのがスージー役を務める中屋柚香だ。
なんとこの作品は彼女のデビュー2作目。初出演は同じく園 子温監督のNetflix配信ドラマ『愛なき森で叫べ』だった。一般公募からのオーディションで見事に主要キャストを射止めた彼女はデビュー作にも関わらず園子温に「中屋柚香が一番良かった」と言わせしめた。
「インタビューを受けていると自分の自意識が裸にされていくみたいで恥ずかしいですね」。そう笑う彼女の表情からは、まだあどけなさも覗く。
多摩美術大学出身、園 子温作品出演、そしてハリウッド。駆け上がるシンデレラガール・中屋柚香に迫った。
多摩美に通った4年間で中屋柚香は形成されたのかもしれない
――今日は中屋さんの出身校でもある多摩美術大学で撮影をしていますが、やっぱり思い出深いですか。
まだ卒業してからそんなに経っているわけじゃないんですけどね(笑)。うん、やっぱり私の原点はここだなって思いますね。
――大学では演劇舞踊コースで学んでいたと聞きました。
4年間、演劇を勉強していました。私はどちらかと言えば脚本の方が興味があったし、そっちの方が褒められることが多くて。ずっと本ばかり書いていましたね。パソコンとにらめっこして並行して何作品も書いたりなんかして。演技の授業で褒められるということはなかったんですよ、実は。
演劇コースなので、講義の中に台本を書く授業があるんです。能の演目をベースにして、そこから自由に台本を書いてきなさい、という課題で。劇の主題を現代劇にアレンジしてもいいし、どんな風に解釈してもいい。能からイメージをもらって、そこから派生した物語であれば何をしてもどうぞ、という。
その時、私は「邯鄲(かんたん)」という能の演目を基に脚本を書いたのですが、それが凄く褒められて。それがきっかけで、3年生の時に全体で発表する作品も私が書かせていただくことになりました。
――かなり学生の自主性に委ねられているんですね。
その自由な空気みたいなものが多摩美の楽しさでしたね。
学生時代、一番好きだった授業が「自己表現をしましょう」という授業で。それこそ何をやっても良いという授業。
教室にいる必要もないし、持ち込みもOK。さすが美大、って感じなんですけど、もうみんなメチャクチャなんですよね。自分の髪の毛で書道を始める人もいれば、中庭の隅っこで激しいダンスを踊っている人がいたり。もうお祭り騒ぎ。統一感はないんですけど(笑)。
そういう同級生たちに囲まれて、刺激を受けたし、何より純粋に楽しくて仕方なかったです。
――その授業の中で、中屋さんはどんなことをしていたんですか?
私は教室の中に自分の部屋を作りたいなって思って。家の中にあるものをたくさん持ってきて、自分の部屋を完成させましたね。
急に湧き上がってきた空間、という感じで。布みたいなもので領域を一応区切って、その中ではパジャマを着ている私が大好きなアイテムと一緒にくつろいでいる。同級生たちにそんな私を盗み見ていてもらおうと思って。
2021.10.08(金)
撮影=松井良寛
文=CREA編集部