成人しても不安に対して過敏な「繊細さん」

 一方で、最近は、成人してからも過敏で、不安を大きく感じがちだという人たちにスポットライトが当たっています。いわゆる「繊細さん」ですね。アメリカの心理学者エイレン・アーロンが、ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)と名付けています。

 

 脳には恐怖を感じる扁桃体という場所があります。どうやら、HSPの人はここが強く働いてしまっているようです。例えば、他人がちょっと眉を寄せただけで「この人は自分にとって危険な信号を発しているのではないか」と考えたり、いつもと何かが少し違うだけで大きな不安を感じたりするということが起こりやすくなるのです。

HSPの人は情報の取り方を工夫しよう

 ただ、言い換えればこういう人は、外からの刺激を受けたらすぐに防御できるように、常に準備している人でもあるのです。言うなれば、電源オフにならない。ずっとスタンバイした状態にあるという感じでしょうか。でも、すぐ立ち上がるのはいいのですが、消費電力が大きくなってしまう、つまり、エネルギーを消費しすぎ、疲れてしまうのです。

 あまりに疲れてしまうようなら、スタンバイ状態から時には自分を解放できるように、情報の取り方を工夫したほうがいいかもしれません。なるべく集中感をもって没入できる仕事、作業、あるいは熱中できるスポーツなどの習慣をもつようにしてみてください。すぐにスマートフォンやパソコンで情報を検索できない時間をつくるというのも大切ですね。HSPの人はちょっとした情報や他者の言動を大きくとらえてしまう傾向があるので、できるだけそこから離れていられる時間を少しでもつくるようにしましょう。

不安な人には「語学」の勉強が向いている

 また、不安でよく準備するという特質を利用して、ステイホームに語学の勉強をすることもお薦めです。ロシア語、中国語、フランス語……努力が裏切られることの少ないのが語学なので、不安な人に向いている勉強分野といえます。早くコロナが収まって気軽に力試しの旅ができるようになるといいですね。

中野信子さんにあなたのお悩みを相談しませんか?​​
みなさまのお悩みを woman@bunshun.co.jp(件名を「中野信子人生相談」に)もしくは〒102-8008 東京都千代田区紀尾井町3-23「週刊文春WOMAN」編集部「中野信子の人生相談」係までお寄せください。匿名でもかまいませんが、「年齢・性別・職業・配偶者の有無」をお書き添えください。

text:Atsuko Komine

2021.10.01(金)
文=Atsuko Komine