あのアーティストの個性溢れる名曲
意外な人気アーティストが意外な楽曲で参加しているのも「みんなのうた」の魅力だ。アウトオブ眼中だった歌手が「みんなのうた」で好きになった、なんてこともあるだろう。
●「グラスホッパー物語」(高見のっぽ)
一本の短い映画を見ているよう。NHK教育テレビの名番組「できるかな?」ののっぽさんが作詞と脚本担当。伊藤有壱さんのクレイアニメとの融合もすばらしく「みんなのうた」屈指の名作と言っても過言ではないだろう。命について、自由について、バッタ目線でドラマティックに描かれる。「とべ とべ はねをひろげ おおぞらのむこうへ!」。のっぽさん、エエ声!
●「はじめての僕デス」(宮本浩次)
エレファントカシマシの宮本浩次が、小学校4年生で歌唱した楽曲として有名。「ワカッテクレタラ ケッコウケッコウ!」(作詞:関沢新一)の歌いっぷりは、すでにバンカラ臭に溢れている。どれだけ荒々しく歌っても音程がブレない、日本語がキチンと聞こえるという彼の歌唱のルーツを感じられる貴重な一曲だ。
●「転校生は宇宙人」(BAKUFU-SLUMP)
「君にだけ わかるのは 仲良くしてほしいから」(作詞:サンプラザ中野)。カッコよくて、鼻につーんと来る。あれれ、なぜか涙が……。最高にアツい秘密の友情物語。爆風スランプがものすごく好きになった曲。
●「メロンの切り目」(細川ふみえ)
「勝手にスペアキーを作り家宅侵入するストーカーの歌」という説もあるようだ。細川ふみえはボディだけでなく、声もふるっふるに柔らかい。彼女の姿が映らず、アニメ映像に乗ることで、そのマシュマロボイスがしっかり再確認できる。
2021.08.08(日)
文=田中 稲