とにかく巻き込まれる災難体質

『引っ越し大名!』では気の弱さにつけこまれる、いわば「巻き込まれ」系だが、星野源が遭遇する災難はまだまだある。しかも、わりと頻繁に劇中で死にかける。

 映画『地獄でなぜ悪い』(2013年)ではヤクザの娘で元人気子役のミツコ(二階堂ふみ)に騙され、極道の抗争に巻き込まれる役。

 偶然出会ったミツコに10万円で「1日恋人のフリをしてほしい」と頼まれ、鼻の下を伸ばして無償で快諾するも、それが地獄の一丁目。災難に巻き込まれたときの星野源は、最高におかしい。

 実はこの映画、劇中でまっとうな小市民は星野だけ。日本刀や拳銃で極悪非道に暴れまくるヤクザ(國村隼や堤真一)、テンションと思考回路が異様な映画オタク(長谷川博己)、恋したミツコは残虐極まりないドS娘。

 たった一日の偽装恋人のはずが命を狙われ、大量のコカインにまみれて右腕は切り落とされるわ頭に刀刺さるわの一大事。無茶ぶりと暴力に白目を剝きながらも、ミツコを守ろうと超微力ながらナイト気取り。星野源の表情がいちいち切なくて、いちいち可笑しいのだ。

 

災難を引き寄せる吸引力はダイソン以上!

 もうひとつ、災難作を。『プラージュ~訳ありばかりのシェアハウス~』(2017年・WOWOW)の主人公・吉村貴生は旅行代理店勤務の冴えない男。

 上司からは中身スカスカの「ヘチマ」と呼ばれ、同期の女性は上司に寝取られ、やけ酒をしていたら、よからぬ輩と意気投合。その場でたった一度覚せい剤を打ったために逮捕される。200万円で保釈されるも当然解雇。とりあえず家に戻ってAV鑑賞中(いや、そこな!)、火事で家を失う。災難を引き寄せる吸引力はダイソン以上!

 この貴生、初めはまったく反省がない。罪の意識もない。酔った勢いのうっかり不運くらいの感覚で、すこぶる能天気なのだ。家も仕事も失った貴生が身を寄せたのがシェアハウス「プラージュ」(オーナー役は石田ゆり子、住人は仲里依紗、中村ゆり、渋川清彦にスガシカオ、眞島秀和ら手練れが勢ぞろい)。

2021.06.21(月)
文=吉田 潮