瞳に光が入るのと入ってないのでは、印象がまるで違うことをリモートワークで実感した人も多いのではないだろうか。ドラマでも瞳の明かりの影響力は絶大で、観る者にもそのキラキラが力を与えて来た。世帯視聴率がそれなりに高いドラマは主人公がまっすぐ明るい瞳をしている。
『コント』も中浜の目に光が入った回の翌週は視聴率が上がった(第8回)。人は主人公の明るく強い視線に惹かれやすい。にもかかわらず、なぜ、陰キャが主人公で、簡単にすっきりと答えの出ないドラマが増えたのであろうか。
“陰キャドラマ”が増えた2つの理由
ひとつはミステリー仕立てにできること。『モネ』の百音、『コント』の春斗と中浜、『とわ子』のとわ子……皆、一様に多くを語らない。だが、もともと暗かったわけではなく、学生時代は部活の中心になって張り切っていたりしたことが後になってわかる。彼らは皆、何かをきっかけにふさぎ込むようになったのである。
その何かがドラマのフックになり、「いったい主人公たちに何があったのか?」「彼らは傷を癒やすことができるのか?」というように、手が届きそうで届かない謎が視聴者は気にかかり、それがドラマの牽引力になっている。大きな事件は起こらないけれど、主人公の心もようを解き明かすミステリー仕立てである。
もうひとつは、リアリティー。あえて「かなしさ」を描く気概。長引く不況、ハラスメントが横行する社会、劣悪な労働環境……などによっておつかれ気味な現代人は、ドラマでは気楽でいたい。そのためリアルな描写を避ける傾向にある。家族や就職先でのパワハラなどを描いたドラマを見たくないという声は、SNSの発展によって可視化され増幅もする。
そのため、一話完結で、犯罪者が捕まるミステリーや患者が必ず救われる医療ものが増えて、恋愛ものの場合は、キュンとなるシチュエーションものが人気。とにかく主要な登場人物が報われるものが好まれる、はずなのだが……。
2021.06.17(木)
文=木俣 冬