③半世紀にわたった戦いの記録
自ら刺され、さらに編集部が襲われ、そして息子までが狙われた著者による、半世紀にわたった戦いに記録。
みなさんはどうやって今日読む本を決めていますか? 私は基本的に仕事以外の時間はほぼ芸人の深夜ラジオをradikoで聞きながら小説を読んでいるのですが、たまに「こんなにお笑いや物語の世界に没頭していて大丈夫なのだろうか?」と不安になることがあり、そういったときにノンフィクションを読むようにしています。
この『喰うか 喰われるか 私の山口組体験』もそのような流れで手に取ったのですが、大反省。そんな片手間ではなく、正装してかつ正座で読むべき本でありました。
こうも緊張感をキープしながら、面白さも感じさせるなんてまさに溝口敦氏にしか書けない本です。山口組にまつわる事件が詳細かつ実名で描かれているので、登場人物の名前をWikipediaで調べながら読むと、よりスリリングです!
『喰うか 喰われるか 私の山口組体験』
溝口 敦著
講談社 1,980円
④実家の味が恋しくなる
料理家・細川亜衣さんが写真、文、レシピ、すべてを手がけた料理本。
時短! 簡単! たったこれだけ! 電子レンジで! 今人気の料理本にはこれらの文言であふれているというのに、この本の表紙は潔く本のタイトルと作者である細川さんの名前だけ。料理の写真もなく、図鑑のように大きく、ずっしりと重いのもかっこいい。
ポテトサラダ、春巻き、ピーマンの肉詰め……。本のタイトル通り、私も家で何度となく食べたいわゆる定番料理の名前が並んでいるけれど、いざそのページをめくってみると母が作ってくれたものとはまるで違う洗練された料理の写真とレシピが。ポテトサラダなんて、余計なものは一切入ってない真っ白でかっこいいルックスです。
細川さんのレシピで作ってみたいと思う一方で、母のあかぬけない料理が恋しくなってくるから不思議。上司や同僚、そして好きな人の作るポテトサラダも食べてみたいな。読み進めていくと、まわりの人たちの「定番料理」が知りたくなるはず。
『料理集 定番』
細川亜衣著
アノニマ・スタジオ 2,420円
⑤一番信頼できる心霊ビデオ評論誌
会社に行く理由は、同僚と好きなものについて語り合いたいから。私の場合はこれに尽きます。好きなものについて話しているときってどんどん興奮してきて、しまいには脳がぱーんと光り、時間の概念がなくなってしまいます。やばい。仕事しなきゃなのに、もうこんな時間!みたいなことをひたすら繰り返しています。
それくらいに「今ハマっているものについて語りたい」欲が強い私ですが、他の人が自分の好きなものについて熱く語っている様子を眺めているのも、幸せをおすそ分けしてもらった気持ちになれるので大好きです。
心霊ビデオ愛好家たちが作り上げた『霊障』を読んでいると、その時と同じような幸せな気持ちになれます。紹介文の中に「傑作である」とか「傑作だ」という言葉がこれでもかというほどにあふれているので、執筆者の方々が本当に心霊ビデオが好きなことが伝わってきて、胸が熱くなってくるのです。本当に好きなものに対しては語彙力が潰えてしまいますよね。私なんて「最高すぎて苦しい……」しか言えなくなりますもん。個人的には、心霊ビデオ界の巨匠である児玉監督がジャン・ユスターシュを研究していたという事実を知れて嬉しくなりました。
次号の発刊が楽しみなZINEがまた一つ増えて嬉しい限り。憧れのDJであるokadada氏が好きだという、「コワすぎ! vol.4」を観返してみようと思います。
『霊障』
1,600円
https://habouhou.booth.pm/
こちらで購入可能
Column
週末何しよう? 過ごし方5選
興味あることは沢山あるけど、「To Do List」じゃ重すぎる、スローなウィークエンドにしてほしい。そんなあなたのために、ゆるーい週末の過ごし方ガイドをCREA編集部が5つピックアップしてみました。
もちろん、今週末は部屋でゆっくり寝て過ごしちゃう、なんてのもOK。だって、週末はまた来週もやってくるんだから。
2021.06.03(木)
文=CREA編集部