興味あることは沢山あるけど、「To Do List」じゃ重すぎる、スローなウィークエンドにしてほしい。そんなあなたのために、ゆるーい週末の過ごし方ガイドをCREA編集部が5つピックアップしてみました。

 もちろん、今週末は部屋でゆっくり寝て過ごしちゃう、なんてのもOK。だって、週末はまた来週もやってくるんだから。

 今週の「週末何しよう?」も特別編。緊急事態宣言が延長され、出かけることもままならない今、せっかくだから本でもゆっくり読んでみませんか? 今回紹介する5冊の本は読むことで新たな世界への扉を開いてくれる危険な本たち。週末どころか、一生楽しめるぐらいのインパクトです。


①ある家族を見守り続ける喜び

 写真家、文筆家として活躍している植本一子さんの2021年1月から3月までの記録。

 植本さんの本をひとたび開くと、なぜだか共感できる文章を少しでも多く見つけたくて、毎回一気読みしてしまいます。「わかるわ~!」と思う文章があると、そのへんにある紙をしおりがわりに挟み(今回は紙を探す時間も惜しくて、手元にあるティッシュをたくさん挟んだ)、その箇所を読み返すのが習慣になっています。

 他の本では決してこんなことはしないし、共感したいがために読んでいるようでなんだか恥ずかしいうえに植本さんにも失礼な気がするのだけれど、なかなかこの読み方を辞められません。

 共感探しをしている理由を「私もシングルで子持ちだから」「植本さんの恋の行方が気になるから」などと、色々でっち上げて自分を納得させていたのですが、この新刊を読んだら「植本さんとの共通点が欲しい」だけだったと気づきました。困ったことがあったらすぐ相談できる人たちや、助けてくれる人たちがまわりにいて、自分の気持ちを写真や文章で表現できる植本さんにただただ憧れていたんですね、私。

 「なーんだ、憧れの人と自分を重ねたいだなんてかわいいとこあんじゃん、自分」とふっきれたので、この週末は新たな気持ちで過去の著書も含めて時系列に読み直してみようと思います。

『個人的な三ヶ月 にぎやかな季節』

植本一子著
1,760円
石田商店で通販可能
https://ecdstore.thebase.in

②金原作品はいつだって私を支えてくれる

 唐突ですが、金原さんの作品のことを様々な生き方や考え方、そしてどんな趣味嗜好を持つ人でも決して否定せず、いつだってやさしく肯定してくれる先生のような存在、かつ、誰もまだ踏み入れてない世界に飛び込んでいって、そこの様子をこっそりと教えてくれるちょっとぶっ飛んだ先輩のような存在だと思っています。つまり、金原さんの作品に支えられて生きてきました。

 なので、金原さんが作家の燃え殻さんとの対談で「(夫は)私が欝で落ちているのを間近で見ながら、『水を浴びれば治るよ』と言えちゃう人」と、話しているのを読んだときには、大変勝手ながら「おい! 夫! 私の金原さんをもっと支えろ!」と声に出してしまったほどです。

 『アンソーシャル ディスタンス』に収録されている短編「ストロングゼロ」に出てくるストゼロに依存している女性も、「デバッガー」のプチ整形を繰り返す女性も、このつらい時代に懸命に生きている、未来の私であり、自分の分身のような存在です。彼女たちは「一緒に頑張ろうね」なんてあからさまに励ましたり、「つらいのはみんな一緒だから手を取り合っていこうね」なんてダサいことは決して言わないけれど、そっと私の人生に寄り添ってくれるんです。

 確かに(この新刊の公式HPにあるように)金原さんの小説は「読めば返り血を浴びる」ような作品かもしれないけれど、返り血の温かい感触に救われる人も多いのではないでしょうか。

『アンソーシャル ディスタンス』

金原ひとみ著
新潮社 1,870円

2021.06.03(木)
文=CREA編集部