「芸能界にいるのに、誰からも興味を持たれない」って、いかに恐ろしいかわかります? そういう状態が長かったので、「こんなにたくさんの人が興味を持ってくれた」という部分で非常にありがたいと思っていました。
「あざとかわいい」と言われることがうれしかったわけではありませんが、私を形容する言葉として「肩書き」がついたというのは、うれしかったですね。しかもそれが、議論を呼ぶようなテーマで、みんなが私の「肩書き」で盛り上がっているということが私にとっては驚くようなできごとでした。
「あざとい」がポジティブなイメージに
──時代が松本さんに追いついた、ということでしょうか。
松本 そんな!大層なものではありません(笑)! 私はそれまでも同じように演技してきたんですけど、世間のみなさんが私を認識してくださるキーワードがたまたま「あざとかわいい」と重なった、ということだと思います。
日常生活でも演技でも、「あざとかわいく」見えるようなしぐさや態度をしているつもりは一切ありませんが、たまたま『ホリデイラブ』の井筒里奈のキャラクターが「あざとかわいい」という世間の定義と一致したんだと思うんですよね。
「私も里奈みたいになりたい」とか、髪型やメイク、着ている洋服を教えてくださいという問い合わせが急増したと聞いて、みんな「あざとかわいく」なりたいと思っていたんだなと初めて知ったんです。「あざとい」って悪いイメージのある言葉ですけど、「あざとかわいい」が流行することで、「あざとい」がポジティブなイメージの言葉に転換したらうれしいなと思いました。
──「あざとかわいい」は、いまはすっかりトレンドのひとつになっています。
松本 そうですよね。『ホリデイラブ』から3年経ちますけど、いまではすっかり「あざとかわいい」が市民権を持ってくれて、すごくうれしいなと思います。
「あざとかわい」くあることは、陰口を言われ嫌われる対象だったのが、世の中の価値観が変わって、「私もあざとかわいくなりたい」と堂々と言えるように変わったのもうれしい。SDGsやジェンダー平等の概念が広がり、日本も少しずつ多様性を認める社会に変わってきましたが、私が里奈役を演じたことがほんの少しでもその一助になれたのなら、こんなにうれしいことはないし、演技を続けてきてよかったなと思います。
2021.05.15(土)
取材・構成=相澤洋美