移動時間21時間のからくり
出発の日、30Lのリュックに荷物をぎゅうぎゅうに詰め、さらに空港で買った東京ばな奈を入れて成田発北京行きの飛行機に乗りました。
無事に飛行機に乗れた安心感と共にこれからの旅への不安が襲ってくる中、唯一心の支えになったのが、Airbnbで決めた優しそうな顔のおばあちゃんの宿のことでした。
当初、宿も取らずに行こうとしていた私に、「一泊目だけでも決めてから行きなさい」と言ってくれた両親や標本屋のお母さんのおかげでした。
お昼過ぎに飛び立った飛行機は、4時間半後には北京に到着。移動予定時間が21時間だったため、北京からキルギスが遠いんだなと思っていましたが、あらためて確認すると北京からの乗り換えを待つ時間がとても長いことに気が付いたのです。
出発は翌朝の4時です。11時間を北京の空港で過ごさなければいけません。
本当にどれだけ自分がいい加減で、衝動的だったのかと反省しました。
空港での待ち時間は、時間が経つにつれて人も少なくなり空港内の照明も消されどんどん暗くなっていきました。だんだん不安になってきて、どこか電気のついているところをと、夜の蛾みたいに探し歩いていると、小さい喫茶店を見つけました。
何時間もの間、全員悪い人に見える周りの人達から荷物を守り、何度も来る睡魔と戦って、やっとの思いで乗り換えの時間の朝4時になりました。
乗り換えで肝を冷やす
カザフスタン行きの搭乗口ではすでに香辛料の匂いが漂い、私以外はすべて「地球の歩き方」で見たような現地の方たちでした。
飛行機の中で私は「本当にキルギスに向かっているんだ」と、改めて興奮してきました。
カザフスタン(アルマトイ)に到着したのは北京から4時間半、目的地キルギスのビシュケク(Bishkek)に行くには、ここからさらに小さな飛行機に乗り換えて行かなくてはなりません。
しかも乗り換えはたったの40分。この小さな空港アルマトイは国際空港にも関わらず、案内や表記がほとんどロシア語とカザフスタン語。
空港中での移動はゲートナンバーのみが頼りでした。
ドキドキしながら搭乗口に着くと、北京から一緒だった鷹の模様の入ったリュックの女の子が目の前で反対方向に向かって走り出す姿を見ました。直感で私は「この子について行かないと」と思い、彼女の後を追いました。
走った先の搭乗口にはビシュケクの文字があり、どうやらゲートが変更になったようでした。現地の人たちもパニックになっていました。
私はこの鷹のリュックの女の子のおかげでみんなよりも早く、無事に乗り換えに成功することができました。
今までより少し小さめの飛行機に乗り、席に座って目の前の画面に改めてBishkekの文字が見えた時は安心し、心の中で鷹のリュックの女の子に感謝しました。
人間は本当に切羽詰まると直感が働くんだなーとも思いました。
2021.04.26(月)
文・写真=ベック