こうした点を踏まえて改めて東京という街を俯瞰すると、都内はオフィスビルが林立している。国土交通省の調査によれば、日本における従業員100人以上の事業所で東京に所在する割合は37%。1都3県で46.9%にも達する。イギリスにおけるロンドン16.6%、アメリカにおけるニューヨーク州4.9%と比べても、東京という都市がいかに「オフィス立国」であるかがわかる。
環境や居住性に優れた「住みやすい東京」へ
ポスト・コロナの時代になると、都心に通勤してきて仕事をするというこれまでの働き方に大変革がおこる。そうなると、東京の強みであった経済における優位性はあまり評価される項目ではなくなり、いかに住みやすい東京を造ることができるかが問われるようになるだろう。
東京都心部でのマンションはタワーマンションを中心に、最近では香港やシンガポールと見間違えるほどの林立ぶりだ。どの建物も超高層で一見立派ではあるが、タワーマンションの建つ立地周辺は、元は港湾地区であったり、元工業地帯であったり、環境や居住性といった点から考えるとイマイチのものが多い。
またハードとしては優れた建物であっても、たとえば外国人ビジネスマンが東京のタワーマンションを借りて、本国からメイドを呼び寄せても、メイド用の部屋がない。またマンション内の各種表示でも外国語対応がなされておらず、管理形態においても、グローバル化は、いまだ緒に就いたばかりである。
IT分野では日本は世界から周回遅れになっている
公共施設でも都内に居住する人の目線に立っているとは言い難い。公共の図書館の多くが夕方5時頃には閉館になる。役所のサービスも然り。マイナンバーカードの普及も遅く、手続きが異なれば役所でたらいまわしにされてしまう。
日本の都市が外国に比べてIT系でおおいに劣っていることは今回のコロナ禍でもいやというほど証明されてしまった。日本人の多くはいまだに日本はアジアの最先進国であると自負しているが、こうした分野において、日本は世界から周回遅れになっているのが現実だ。そしてその日本の中心都市、東京こそが、生活するという視点から今後の立ち位置を明確にしていく必要があるのだ。
2021.03.31(水)
文=牧野知弘