長瀬智也主演、宮藤官九郎脚本のドラマ『俺の家の話』第4話を見た時「ああ、クドカンは『カラマーゾフの兄弟』をやっているのか」と思った方は多かったのではないだろうか。
事実、SNSでも「これはクドカン版『カラマーゾフの兄弟』だ」という声は多く見かけた。すると『カラマーゾフの兄弟』オマージュとして見る『俺の家の話』は、「介護の話」だけでは終わらない。普遍的で、さまざまな人に当てはまる家族の物語となっていることに気づく。
「親の介護」を大きなテーマとして描いた物語
『俺の家の話』は、2021年冬現在放送されている連続ドラマだ。長瀬智也演じる主人公・寿一は、能楽の人間国宝である父を持つプロレスラーである。
寿一はいわゆる「能の家」に生まれ、父にずっと能を教わっていた。しかし17歳のとき、一度も褒められない稽古に耐えられず家出してしまう。以後プロレスの門を叩き、レスラーとして人気を博す。そして現在、プロレスラーとしては致命的な怪我を経つつも、細々とレスラーを続けている。
しかしある日、父・寿三郎(西田敏行)が危篤と聞き、久しぶりに家へ戻る。感極まった寿一は「自分が家を継ぐ」と言うのだが、父は奇跡的に回復する。
すると家に戻って来た寿一を待ち受けていたのは、父の介護問題だった……。
『俺の家の話』は、能楽の家やプロレスといった題材を扱いつつ、「親の介護」を大きなテーマとして描いた物語なのである。
第1話を見たとき、衝撃を受けた視聴者は多かっただろう。「介護を、こんなにポップに扱うんだ!」と。
もちろん深刻なシーンもあるのだが、総じて笑える場面が多い。今作が表舞台に立つのは最後だという長瀬智也出演作へのオマージュや、随所にちりばめられた小ネタも多数。さらに脚本のみならず、プロレスをする長瀬智也の姿、介護される西田敏行、そして父の介護ヘルパー兼婚約者として突然登場した魔性の美人・さくら(戸田恵梨香)の存在が、物語全体をコミカルにする。介護を扱いつつも、視聴者が笑って観られるドラマになっていた。
2021.02.25(木)
文=三宅香帆