スゴすぎる「無印のレトルトカレー」、マニアの度肝を抜いた立役者の正体 から続く
従来の日本のカレー、特に高級志向の欧風カレーは、外食でもレトルトでも常に、家庭では出せない「旨味とコク」を重視した味わいを目指してきました。インドカレーもまた日本における主流のそれは欧風カレー同様の傾向があります。
しかしその傍らでこの10年ほどは、それとはだいぶ方向性を異にする、より土着的で「伝統的」「家庭的」な本場志向のカレーも確実に支持を集めつつあります。無印良品のエスニック系カレーは確実にその静かなトレンドの延長線上にあります。
無印良品のインドカレーを食べてまず感じることは、これはインドの家庭や街場の食堂で食べられているカレーがわりとそのまんまレトルト化されているのでは? という印象です。
旨味やコクだけに頼らない香りのインパクト
一口目から鮮烈なインパクトを残すのはその「香り」です。香りの主役はもちろんスパイス。本場に倣ったというそのコンセプトを全く裏切らないスパイスの配合、ただし配合と言っても単に粉のスパイスをブレンドするだけではない、調理の段階ごとに適切に素材とスパイスを合わせていくインドカレーならではの技術がレトルトの中に封じ込められています。
そして、普段スパイス料理に慣れ親しんでいる人なら香りと同時に気づくのは、素材由来のジワジワくる素朴で飽きないおいしさです。香りのインパクトにかき消されがちですが、インドカレーは意外にも旨味やコクといった要素は控えめであり、無印のカレーはそれを十分に再現しています。
旨味やコクだけに頼らない香りのインパクトがありつつその本質は素材主義的な素朴で食べ飽きない味わい、これが無印の全てのカレーに共通する魅力と言ってもいいのではないでしょうか。ここからは、そんな無印のカレーの中からインド系のそれを中心に実食した感想を記していこうと思います。
2021.02.07(日)
文=稲田 俊輔
写真=今井知佑